著者
田村 〓 遠藤 健二
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, 1979-03-15

青函トンネル工事は, 海底下でかつ長大という特殊な条件下にあり, 各種の調査, 技術開発により安定性の高い施工を行っている。この報告は, 昭和51年5月6日, 北海道側海底部作業坑での異常出水について, その経過と対策について述べたものである。出水地点は, 坑口より4,588mの所で, 切羽から700l/min程度の出水が見られ, 30分後には4t/minに増大, 瞬時には70t/minを記録し, 3,000m程度にわたって坑道が水没した。出水からほぼ1日経過した時点で排水ポンプを多数増設し, 排水作業を開始, 6月24日には切羽付近の崩壊土砂を確認した。異常出水の原因を考えるさい, 注入施工状況の良否が大きな問題となる。青函トンネルでは, 長尺水平ボーリングにより地質の先行確認を行い, この情報あるいは切羽の観察した状況に基づいて切羽から地盤の強化と止水の目的で注入をしている。そして, チェックボーリングにより注入効果の確認をし, 掘削を開始している。しかし, こうした入念な注入施工にもかかわらず, 出水事故を引き起こしたが, 今後, 細心の留意と徹底した施工管理が必要であると述べている。