著者
遠藤 教昭 菅原 準二 三谷 英夫
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.105-115, 1999
被引用文献数
3

本研究の目的は, 骨格型下顎前突症における垂直的顔面骨格パターンと脳頭蓋形態との間に関連性があるかどうか, すなわち, Short face群とLong face群の脳頭蓋形態に差異が認められるかについて検討することである.研究対象は, 未治療女子骨格型下顎前突者398名(暦齢6歳0カ月∿27歳1カ月)で, 暦齢によって, 7歳, 9歳, 11歳, 成人群の4つの年齢群に区分した.それらの側面頭部X線規格写真の透写図上で設定した変量に統計処理を適用して, 各年齢群におけるShort face群とLong face群の脳頭蓋形態の比較を行ったところ, 以下の結果が得られた.1. Long face群においては, Short face群と比較して頭蓋冠前方部の前後径が有意に小さく, 両群の差は増齢的に明確になっていた.すなわち, Long face群はShort face群よりも, 前頭部の前方成長量が少なかった.2. Long face群においては, Short face群と比較して前頭蓋底の傾斜角(FH平面に対する前頭蓋底の傾斜角)が有意に大きく, 両群の差は増齢的に明確になっていた.3. 以上のように, Long face群の脳頭蓋形態は, かつて遠藤が報告した顔面頭蓋形態と同様に, Short face群と比較して増齢的に扁平化する傾向が認められた.さらに, 脳頭蓋と顔面頭蓋のいずれについても, Short face群とLong face群の形態的な相違は経年的に明確になっていたが, 前額部がそれらの形態的調和を保つために補償的な成長を示す部位であることがわかった.