著者
登坂 宣好 遠藤 龍司
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究課題では、非破壊的立場から計算力学的に構造物の力学的挙動解析と補助情報量とによる確率ダイナミックシステムを構成し、そこに含まれる未知状態ベクトルを同定する為の構造損傷同定解析システムの構築を目指した基礎的な研究を展開してきた。特に、確率ダイナミックシステムにおける同定手法として必要なフィルタについての考察を重ねてきた。3種類のフィルタによるフィルタリングアルゴリズムを展開し、各フィルタの荷重伝達機構にもとづいた構造形式に対応する同定特性を明らかにすることによって同定解析システムの適用性を図ることが出来た。この同定解析システムの適用性を、各種の構造物(平面および立体トラス、塔状トラス、ブレース付きフレーム構造、大型浮遊式海洋構造)を対象とし、構造物のヘルスモニタリングデータとして固有振動数、固有モードを補助情報量として採用したときの損傷同定解析結果を蓄積し検討した。特に、固有振動数に関しては、計算力学的立場からの計算値と構造物の模型に対する実測値を採用した場合の同定結果の比較も行い、ヘルスモニタリングデータの統計的性状が同定結果に及ぼす影響も検討した。このことによって、構造物のヘルスモニタリングデータから構造物の損傷を同定するには、ノイズを含んだ計測データを補助清報量とした逆解析システムの構築が必要であることも明らかとなった。なお、3種類のフィルタのうち、パラメトリック射影フィルタに含まれている正則化パラメータについての考察から、一般的な可変的フィルタリングアルゴリズムを構築できる可能性を見出した。その新しいフィルタリングアルゴリズムの構築と展開は次年度からの研究課題としたい。
著者
登坂 宣好 今川 憲英 遠藤 龍司
出版者
東京電機大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

構造物の特性を非破壊的に把握することは, 昨今の耐震偽装問題を防ぐことのみならず, 大地震後の建築物の安全性を確認する意味において重要なテーマである. 本研究では限られた計測データを有効に活用することで高精度の同定解析を可能とするフィルタ理論(可変パラメトリック射影フィルタ)を構成した. その理論に基づき計算力学の立場からフィルタリングシステムを構成し, フレーム構造等に適用し, 有効性を検証した. 今後は, 構築したフィルタリングシステムを用いた利便性の向上と実用化を図りたい.