著者
郭 秋薇
出版者
Institute of Economic Research, Kyoto University
雑誌
KIER Discussion Paper
巻号頁・発行日
vol.1510, 2015-11

本稿は『平成21年度日本人の就業実態に関する総合調査』の個票データを利用して、雇用形態が仕事の割り当てに及ぼす影響を調べ、その影響が雇用形態による訓練格差を説明できるかを統計的に検証した。その結果、雇用形態は訓練に直接的影響を及ぼすだけでなく、仕事の割り当てを通じても影響することが明らかになった。非正規労働者は訓練機会の少ない低技能の仕事に就く確率が有意に高く、正規労働者との問の訓練格差の28% はこの影響によって説明される。また、サンプル数が十分でないこともあって有意ではないものの、非正規雇用の各雇用形態 (パート、アルバイト、派遣社員、契約社員) によって正規雇用との問の訓練格差をもたらす原因も異なることが分かった。派遣社員と比べて、パートやアルバイトは雇用形態の直接的影響より、仕事の割り当てを通じた間接的影響による訓練格差が大きい (契約社員については有意な格差が見られない)。本稿の結果から得られた主な政策的含意は、仕事の割り当てを通じて間接的に形成された訓練格差を解消するためには、非正規労働者が正規労働者と同等の訓練機会がある仕事に就けるように企業の雇用管理の在り方を変える必要があることである。