著者
都筑 澄夫
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.344-349, 2002-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
6
被引用文献数
4 2

われわれは, 成人の吃音には発話にかかわるパラリンギスティックな要因である幼児期からのエピソード記憶に対する情動系の負の働きが関与していると考えている.進展段階第4層の吃音者39人 (12~68歳) を系統的脱感作を組み込んだメンタルリハーサルで治療した結果から, 記憶に対する情動反応の可塑性について検討した.場面への恐れと発話の状態について7段階の評価尺度を設け, 吃音者が自分で評価した.結果は全症例の36%が日常生活で吃音に煩わされないレベルまで改善したとともに, 吃音者意識がなくなった.38%の症例は改善したが恐れと発話症状の消失にはいたらなかった.そして26%の症例は改善しなかった.治療結果からエピソード記憶に対する負の情動反応の減少が吃音の改善に関係していること, および従来成人の吃音は治らないとされてきたが, 成人の発達性吃音であっても日常生活場面にて吃音に煩わされないレベルまで, 一定の割合で改善できることが示された.