著者
伊東 孝 鄭 雄男
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.279-287, 2000-05-01 (Released:2010-06-15)

京都地下鉄棄西線の蹴上駅を建設するため、蹴上インクラインの一部を利用して竪坑が掘られた。蹴上インクラインが京都市の史跡に指定されているため、市は復元を条件に用地の使用を許可した。本論文は、蹴上インクライン石垣の解体前および解体時の調査内容を記すとともに、どのような方針と考え方で石垣を復元したのかについて報告している。解体調査から、以下のようなことが判明した。石材は花崗岩で、雑石状ないしは間知石状の形状である。石は大振りで、今日使用されている標準的な石材とくらべると、2~3倍もある。裏込め石も同様で、3倍ぐらいの量が充填されていた。石積みの基礎には、意外なことに松丸太がなく、地盤のやわらかいところに胴木が2本確認されただけである。石垣の復元は、当初、オリジナルと同様、空積みを提案したが、落石の恐れのない「練り積み」を基本とする「空積み風」で復元された。