著者
酒井 絢美
出版者
日本監査研究学会
雑誌
現代監査 (ISSN:18832377)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.24, pp.103-114, 2014-03-31 (Released:2017-06-21)
参考文献数
21

本稿の目的は,監査人の交代という情報の公開が被監査企業の資本市場における評価に対してどのような影響を及ぼすかについて検証することである。本稿で取り上げるのは,株主総会の普通決議を経ず期中に監査人の交代があり,それに伴って一時会計監査人が選任される(期中交代)ケースである。期中交代は,米国にはない日本の監査人交代の大きな特徴の1つであるが,投資家にとってはBad Newsとなる可能性がある。そこで本稿では,累積異常リターン(CAR)を用いて期中交代と通常の交代との比較を行い,期中交代が被監査企業の株価にどのような影響を与えるかについて検討した。その結果,資本市場は通常の交代よりも期中交代についてよりネガティブに反応することを示唆する証拠が得られた。すなわち,期中交代という情報は投資家にとってネガティブな情報価値を有しており,ネガティブな投資行動を引き起こす要因となり得ることを意味している。