著者
酒巻 雅純
出版者
日本財務管理学会
雑誌
年報財務管理研究 (ISSN:09171738)
巻号頁・発行日
no.25, pp.103-109, 2014-05-01

わが国の上場会社でのグループ経営が進む中,純粋持株会社の財務的特質(内部留保・配当・負債ファイナンス)に関して考察した。本稿では,純粋持株会社をグループ内のひとつの組織としてとらえ,NTT(日本電信電話)とソフトバンクの2社を考察対象とした。両社は,そのグループ傘下に中核子会社として携帯電話会社を有し大きな利益を得ている特徴があるが,考察の結果は,次のとおりである。(1)NTTでは,巨額の分配可能額が,傘下の完全子会社にも留保されており,グループ全体としての最適投資の点から,純粋持株会社としての機能を必ずしも果していない。(2)両社とも,負債ファイナンスについて,持株会社だけでなく子会社でもレバレッジ(借り入れ)を活用している。(3)最近のソフトバンクでは,巨額な負債ファイナンスについて,すべて持株会社が行っている。これは,NTTと異なる点であり,次の大型買収を進めることを示唆している。
著者
酒巻 雅純
出版者
日本財務管理学会
雑誌
年報財務管理研究 (ISSN:09171738)
巻号頁・発行日
no.26, pp.84-91, 2015-05-01

日本企業のネクスト・ステップは,何か。新市場創造という成長施策が重要と考える。本論は,成長著しい携帯通信大手のソフトバンクを考察の対象とした。日本の携帯電話市場が成長から成熟段階へ移り,その競争戦略も大きく変わる中,同社は,巨額買収により短期的に規模を拡大した。リスクの高い投資を行い,多くの成功をみた。そこで,買収による加速的な成長に着目し,これを支える財務戦略の側面からケース分析を行った。その結果,(1)「レバレッジ経営」,(2)「ベンチャー投資」,(3)「時価総額拡大経営」という特徴があり,かつ(1)〜(3)をうまく循環させていること,が明らかとなった。これらの特徴は,先駆的な財務戦略に裏付けられており,経営実務上の示唆を深めるものである。