著者
野口 史緒
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.79-94, 2014-08-31

第34回社会保障審議会介護保険部会資料(2010年)によると,特別養護老人ホームの入所申請待機者は,42万人にのぼり,そのうち在宅以外で待機しているのは52.8%であった.本研究では,そのような背景から,医療機関を退院後,行き場を見つけづらい高齢者が,住宅型有料老人ホーム(以下「ホーム」)に入居している現状に注目した.そこで,ある「ホーム」の常時介護を必要とする高齢者47名の家族の聞き取り調査とそこにおける看護・介護労働者の聞き取り調査を行い,長期療養高齢者の生活問題を包括的に捉えることを試みた.入居者世帯を階層区分した結果,相対的安定層といえども,医療,介護,住宅にかかる自己負担は重く,常に経済的不安を抱えながら生活していることが確認された.また入居者は,介護保険制度によって決められた時間報酬のために,短時間で区切られたケアを受けていた.これらの調査結果から,介護問題の構造を浮き彫りにする.