著者
大高 知世 野口 涼太
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.88, 2011

【目的】<BR> H22年度の診療報酬改訂により、回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期病棟)における「休日リハビリテーション提供体制加算」が新設された。それに伴い、回復期病棟で365日体制をとる病院が増えてきている。当院でも、H22年4月より導入しているが、365日体制によるリハビリテーション(以下、リハ)の効果判定はまだ少ない。そこで今回、365日体制前後の単位数・在院日数・Functional Independence Measure(以下FIM)・転帰を比較し、今後の365日体制における課題検討に役立てたい。<BR>【方法】<BR> 対象はH21.4.1~12.31(53例:男性27名,女性26名,平均年齢74±12.1歳)及びH22.4.1~12.31(59例:男性27名,女性32名、平均年齢76±11.3歳)の期間中に当院回復期病棟に在院していた脳血管障害患者である。なお、前者がリハ日数5.5日/週である365日体制前群(以下、前群)、後者がリハ日数7日/週である365日体制後群(以下、後群)とする。両群について、1人1日当たりの単位数(総単位数/在院日数)・在院日数・各月毎のFIM増加数(運動・認知・総得点)・入院時から退院時までのFIM増加数(運動・認知・総得点)・転帰をカルテより後方視的に情報収集した。それぞれウェルチのt検定、もしくはマン・ホイットニ検定による統計学的処理により365日体制前後群での2群間比較を行なった。<BR>【結果】<BR> 1人1日当たりの平均単位数(前群3.0±1.1,後群3.9±0.9)では前群より後群が有意に多く(p<0.05)、平均在院日数(前群136±34.8,後群123±35.6)では前群より後群は有意に少なかった(p<0.05)。また、1ヶ月毎のFIM増加数において前群より後群で比較的大きい値を示す傾向にあるが、統計学的な有意差は認められなかった。入院時から退院時までのFIM増加数(前群18.1±17.1,後群31.6±21.6)においてのみ、後群で有意に大きい値を示した(p<0.05)。転帰は前群(自宅67.9%,老健18.9%,療養11.3%,他1.9%)と後群(自宅57.6%,老健23.7%,療養11.9%,他6.8%)で有意差はなかった。<BR>【考察】<BR> 今回、提供単位数の増加や在院日数の短縮、FIM増加数の向上がみられ、365日体制下でのリハ提供における有用性が示唆された。今後、在宅復帰率の向上を図るため、実用的なADL能力の獲得に向け、リハ提供体制だけでなく技術・知識等における更なる質の向上が課題であると考える。