著者
野口 綾子 井上 智子
出版者
日本クリティカルケア看護学会
雑誌
日本クリティカルケア看護学会誌 (ISSN:18808913)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.39-48, 2016-03-22 (Released:2016-03-22)
参考文献数
29
被引用文献数
9 7

本研究は,ICU で挿管下にLight sedation を受け,人工呼吸器を装着している患者の体験を明らかにすることを目的とした.ICU でLight sedation を受ける人工呼吸器装着患者6名の協力を得て,挿管中の参与観察と非構造化面接を行い,得られたデータは現象学的アプローチを参考に分析した.本質的要素は「見知らぬ環境や人に囲まれ無防備な状態でさらされる」「説明のない状況で感覚を駆使して状況を捉える」「命綱の呼吸器にしばられ異物感と時間や身体感覚の曖昧さに苦悩する」「鎮静薬で眠るより覚醒していたい」「自分にかかわる人や周囲を気遣う」「物言わぬ患者と扱われ伝えるチャンスがない」「任せてもらえない身の回りの事を自分でやりたい」「挿管患者は勝手に動いてはいけないらしい」「医療者にわかっていないように扱われる」の9つが抽出された.参加者は様々な感覚の中で思考し,行為し,自己像を維持している一方,医療者からの扱いで主体的な存在としての人間性が脅かされていた.医療者は,Light sedation 中の人工呼吸器装着患者の認知機能に対する認識を見直す必要がある.