著者
野尻 恵里 諸冨 伸夫
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.58-63, 2021 (Released:2021-10-14)
参考文献数
9

独居の高齢全盲者が転倒により頸髄損傷を受傷し,重複障害者となった症例を経験した.リハアプローチによる ADL の改善は十分ではなかったが,患者は自宅退院を希望した.医療職種と介護職種の多職種連携による包括的アプローチを行い,自宅環境と定期巡回を軸とした居宅サービスを調整して,自宅退院を実現した.退院から 3 年後も独居生活を継続できている.FIM が低下した項目はあるものの,ケアプランの大幅な変更はなく,社会的交流が増え,本人は楽しみを持って生活しており,包括的アプローチによる自宅退院の実現は有意義であったと考える. 重複障害による ADL 障害があっても,自宅退院の実現可能性を十分に検討する必要がある.