著者
田中 智之 若松 冬美 柏木 公一
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.18-26, 2022 (Released:2022-02-17)
参考文献数
12

大規模訪問看護ステーションにおける緊急訪問に関する調査を行い,その特徴を分析した.2020 年 5 月 27 日~ 9 月 1 日にA訪問看護ステーションでの緊急訪問は 236 名 627 件あった.夜間・早朝帯は 181 件(28.9%),深夜帯は 140 件(22.3%)であり,依頼内容は身体症状(71.6%)が最も多かったが,主疾患が悪性新生物とその他では内容や時間帯が異なっていた.緊急訪問の転帰は,往診と救急搬送は各 4 件(0.6%)であった.大規模化により,緊急訪問体制の維持が可能な勤務体制を構築できることや,訪問看護の介入が在宅診療医の負担軽減,地域の救急医療の適正利用に繋がる可能性が示唆された.
著者
舛本 祥一 春田 淳志
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.40-48, 2023 (Released:2023-05-13)
参考文献数
19

在宅医が在宅患者の処方薬をどのような視点で評価し,どのような処方行動がなされていくのか明らかにするため,個人インタビューを用いた質的帰納的研究を実施した.在宅医療に従事する医師 17 名に対し,半構造化個別インタビュー調査を行い,録音データを逐語録化し,テーマ分析を行った.在宅医は,薬剤の身体的影響,患者の予後や QOL,患者・家族との関係性などを考慮しつつ,多職種とのやり取りを含めた在宅医療特有の様々な要因を考慮して,処方行動の判断を行っていることが明らかとなった.処方薬変更のプロセスの見える化,多職種間での処方行動への共通理解が進むことで,在宅医療における処方の質向上につながると期待される.
著者
大友 宣 岸田 直樹 矢崎 一雄 松家 治道
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.45-48, 2021 (Released:2021-02-15)
参考文献数
6

札幌市では 2020 年 4 月中旬から新型コロナウイルス感染症第 2 波の流行があり,介護老人保健施設で集団感染が発生した.札幌市保健所の要請のもと診療支援医師を派遣した.混乱期には人員の不足に対して,人材確保,診療指針の策定を行った.試行錯誤期には搬送のための情報収集の補助,搬送の目安を検討,服薬の減量を行った.現地対策本部が設置され 30 名の入居者の病院への搬送により施設内の状況は落ち着き,集団感染の収束に向かった.在宅医が介入しアドバイスすることは一定の効果がある.現地対策本部設置,介護崩壊対策は今後必要である.行政のみに頼ることなく「自助」「互助」「共助」「公助」の対策を行うことが重要である.
著者
平原 佐斗司 山口 泰弘 山中 崇 平川 仁尚 三浦 久幸
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.60-67, 2022 (Released:2022-02-17)
参考文献数
17

目的:末期認知症高齢者の肺炎に対する抗菌薬の予後と苦痛の改善効果を検討する.方法:国内外のデータベースから検索式を用い,末期認知症の肺炎の抗菌薬治療の予後と苦痛の改善効果についての2つ の CQs を含む5つの CQs に該当する 604 論文を抽出,最終的に採用した 17 論文のうちこれらの CQ に該当する6論文を解析した.結果:末期認知症高齢者の肺炎の抗菌薬治療は予後を改善する可能性があり,とりわけ短期の予後の改善が期待できる.抗菌薬治療の予後改善効果は認知症や嚥下障害の重症度や過去の肺炎回数と関連していた.また,抗菌薬治療が肺炎による死亡前の苦痛を軽減する可能性が示唆された.
著者
中村 育子 前田 佳予子 田中 弥生 本川 佳子 水島 美保 前田 玲
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.19-27, 2023 (Released:2023-08-29)
参考文献数
18

本研究は人生の最終段階において,管理栄養士が多職種と連携して食支援を行うことは,できるだけ自分の口から食事を摂取し,最期まで食べる喜びを感じることができる等,QOL 向上に対する管理栄養士の在宅訪問栄養食事指導の介入効果と,その中で,疾患の違いによる介入効果についても検討する. 在宅訪問栄養食事指導における食支援は,管理栄養士が介護者の困りごとの相談に応じて,介護者の調理技術の向上や簡単に食事を用意できることを可能にし,介護者の食事作りの負担を軽減させ,在宅療養者の最後に食べた物は好物であったことに貢献していた.
著者
石田 ゆず 池上 章太 古田 大樹 小野 千恵 片井 聡 堀内 博志
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.36-44, 2023 (Released:2023-08-29)
参考文献数
18

背景:訪問リハビリを必要とする高齢者は年々増加しており,訪問リハビリの質の向上と自立に向けた取り組みが求められている.目的:訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)の質の向上と自立に向けて,訪問リハの現状を把握し,効果的な介入を検討する.方法:長期に訪問リハを利用する 332 名の基本情報,1 年間の Barthel Index(BI)・Frenchay Activities Index(FAI)変化を調査した.結果:対象者全体で BI は有意に低下し,FAI は有意に改善を認めた(相関係数:0.25).急性発症型疾患では IADL が改善し,内部障害・神経筋疾患では,ADL は悪化したが IADL は維持されていた.結論:訪問リハにおいては疾患の特徴を踏まえ IADL に注目して生活行為向上に向けた包括的な介入をすることが重要である.
著者
鈴木 良香 結城 美智子
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.9-18, 2022 (Released:2022-09-14)
参考文献数
19

本研究の目的は福島第一原子力発電所事故による避難生活で認知症高齢者を在宅介護する家族の生活状況と精神的健康を検討することである.全住民が避難指示による避難を長期継続している福島県A町の協力を得て,避難住宅で在宅介護している家族介護者79名を対象として,個別訪問による面接調査を行った.被介護者は約7割が避難後に要介護認定を受け,認知症の診断を受けている者は約3割であった.対象者は半数以上が女性の高齢者であり,心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorde:以下,PTSD)疑いは約3割で,避難住居形態別の有意差はなかった.介護負担感得点は,持ち家群が仮設住宅群より有意に高かった.結果から,長期避難生活中の在宅介護を担う家族への支援の必要性が示唆された.
著者
野尻 恵里 諸冨 伸夫
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.58-63, 2021 (Released:2021-10-14)
参考文献数
9

独居の高齢全盲者が転倒により頸髄損傷を受傷し,重複障害者となった症例を経験した.リハアプローチによる ADL の改善は十分ではなかったが,患者は自宅退院を希望した.医療職種と介護職種の多職種連携による包括的アプローチを行い,自宅環境と定期巡回を軸とした居宅サービスを調整して,自宅退院を実現した.退院から 3 年後も独居生活を継続できている.FIM が低下した項目はあるものの,ケアプランの大幅な変更はなく,社会的交流が増え,本人は楽しみを持って生活しており,包括的アプローチによる自宅退院の実現は有意義であったと考える. 重複障害による ADL 障害があっても,自宅退院の実現可能性を十分に検討する必要がある.
著者
今永 光彦 外山 哲也
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.19-26, 2021 (Released:2021-10-14)
参考文献数
14
被引用文献数
1

目的:一般市民が老衰死に対してどのように感じているか,及び老衰を死亡診断時の死因として妥当と感じる人・感じない人の特性の違いを明らかにする.方法:一般市民にインターネットによるアンケート調査を行った.結果:1,003 名が回答し,8 割以上が老衰で亡くなることは「安らかな死である」と感じており,「十分な医療が受けられていない」と感じている人は約7%であった.7 割以上が「死因として妥当である」と感じていた.死生観尺度「死からの回避」が高いと有意に死因として妥当と感じていなかった.結論:一般市民の多くは,老衰死に対して肯定的であった.また,死生観が老衰に対する考えに影響している可能性が示唆された.
著者
井村 亘 福井 立基 二神 雅一 北山 順崇 石田 実知子 大東 真紀
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-9, 2022 (Released:2022-02-17)
参考文献数
18

本研究の目的は,訪問看護ステーションに勤務する理学・作業療法士(以下:訪看 PT・OT)の信念対立と精神的健康との関連を検討することである.方法は,訪看 PT・OT 91 名に対して,訪看 PT・OT の同職種,他職種,患者や家族との信念対立が精神的健康に影響するとしたモデルの適合性と関連性を検討した.結果,設定したモデルの適合度は良好な値であった.変数間の関連性は,精神的不健康と同職種,患者や家族との信念対立は正の関連性が認められ,他職種との信念対立は関連性が認められなかった.本研究結果は,訪看 PT・OT の精神的健康の向上に向けて,同職種,患者や家族との信念対立に配慮する必要性を示している.
著者
土井 紗世 須古井 和美
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.26-29, 2022 (Released:2022-06-04)
参考文献数
4

小児在宅療養指導管理における医療・衛生材料支給の現状把握および今後の課題検討を目的に,県の小児等在宅医療推進事業と連携し,「小児在宅医療に係る医療・衛生材料についてのアンケート調査」を実施した.その結果,ほぼすべての医療機関において,必要かつ十分量の材料を調整して支給していたが,診療報酬の範囲に収まらないことが想定された.また,医療機関による支給内容の相違が,円滑な在宅移行を推進していく上で障壁となっていることが示された.今後は小児在宅医療における医療・衛生材料の支給に関するガイドラインの作成等,適切な支給体制の整備を図る予定である.
著者
前川 一恵 桑田 惠子 星山 佳治
出版者
一般社団法人 日本在宅医療連合学会
雑誌
日本在宅医療連合学会誌 (ISSN:24354007)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.10-17, 2020 (Released:2020-09-29)
参考文献数
16

[目的]在宅復帰を目指す高齢患者の摂食・嚥下機能の回復への看護援助の内容を明らかにする .[方法]地域包括ケア病棟に勤務する看護師 130 名を対象に , 摂食・嚥下機能の回復への援助 4 因子 43 項目に加えて , 在宅復帰に向ける食事への援助 3 因子 20 項目で構成した自記式質問紙調査を実施した .[結果]摂食・嚥下機能の回復への援助項目で実施割合が最も高かったものは ,「患者の覚醒状況の観察」(95. 0%)であった . 在宅復帰に向ける食事への援助項目では ,「入院前の認知機能の情報収集」(90.0%)であったが ,【 患者・家族への食事指導 】は 50%以下が 4 項目あった . 実施割合が低い項目は , 食具に関する援助項目と , 作業療法士への相談 , 食前の唾液腺マッサージや口腔内のアイスマッサージであった .[考察]患者の摂食・嚥下機能の回復を目指しては , 食具への知識や, 作業療法士との連携を増やす必要が示唆された. また, 高齢者が退院後も摂食・嚥下機能を維持していくためには , 患者・家族指導の実施割合を高める必要が考えられた .