著者
野村 一雄 藤岡 知昭
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.822-830, 1993-05-20

進行胃癌に対するLAK細胞の臨床応用のための基礎的研究として,健康成人および胃癌患者の末梢血リソパ球よりIL-2添加完全培地(非動化10%ヒトAB型血清添加RPMI)および無血清培地 (AIM-V)によりLAK細胞を誘導し,その性状について検討した.完全培地を使用した場合,健康成人より分離した末梢血リンパ球は,4日目には培養前の60%に回復し,そのNK活性およびLAK活性は4日目以降に著明に増強した.また,培養4日目で無血清培地を使用した場合も完全培地の場合と同様のリンパ球の増殖,細胞傷害性が認められ,その増殖細胞は,いずれの培地を使用した場合も,CD25,HLA-DR,CD3およびCD16細胞が高率で,ともに活性化T細胞,NK細胞の集団と考えられた.また,LAK細胞は単独でIFN-γおよびIL-βを産生し,その産生能は経時的であり,腫瘍細胞の刺激で増強した.TNF-αはLAK細胞をCaki-1またはK-562で刺激した場合に比較的早期に産生された.よってLAK細胞の直接的細胞傷害性に加え産生されたサイトカインを介する抗腫瘍効果も示唆された.さらに,胃癌患者の末梢血リソパ球においても,無血清培地を使用した培養4日目の細胞回復率は,健康成人の場合と同様で,その培養リンパ球は自己腫瘍および培養胃癌細胞を含む広い抗癌スペクトルを有していた.以上の結果は,IL-2添加無血清培地により誘導されたLAK細胞が臨床上有効であることを支持するものと考える.