著者
野村 智夫
出版者
関東学院大学経済経営学会
雑誌
経済系 = Kanto Gakuin journal of economics and management : 関東学院大学経済経営学会研究論集 (ISSN:02870924)
巻号頁・発行日
vol.273, pp.153-161, 2018-03

債務免除を受ける事業再生においては,債務免除額の算定につき,全面時価評価をした総資産額に基づき算定される債務超過額を基礎とする実務が培われてきた。会社更生法は計算規定を設けており,全面時価評価による評価益,評価損の計上が認められ,法人税法上も容認されてきた。しかし,民事再生法には計算規定がなく,会社法の計算規定によることとなり,現行全面時価評価はあり得ないものと考えられている。20 年に渡った事業再生の時代の中で,会社更生手続き,民事再生手続き,あるいは一定の基準に基づく私的整理といった諸手続きは,事業再生における手段の選択となった。経済実態は同一であり,統一された会計処理が求められるように至った。本研究ノートは,事業再生の会計基準は制定されていない現状において,唯一実務の参考となり,法人税制にも影響を与えている日本公認会計協会制度委員会研究報告第11 号の研究を通じ,事業再生会計基準の方向性を考察するものである。