著者
野田 さとみ 佐久間 春夫
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.29-36, 2010-04-25 (Released:2017-05-23)
被引用文献数
1

本研究では,手指の運動を伴う遊びであるあやとりの特徴を明らかにするために,類似する遊びとして折り紙を取りあげ,動作パターンの学習過程について比較検討を行なった.被験者は健康な女性10名であった.あやとり課題・折り紙課題はそれぞれ動作パターンを記憶するための練習時間を設定し(練習中),練習後は3分間連続して課題を行なった.測定項目は,生理指標として脳波の周波数帯域別含有率の変化,心理指標として坂入らによる「心理的覚醒度・快感度を測定する二次元気分尺度」および遂行の自己評定とした.脳波の結果から,前頭部においては課題に関わらず練習中よりも練習後でα1波,α2波,β波の含有率の増加が認められた.中心部・頭頂部では,あやとりは練習中・練習後にβ波が変化しないのに対し,折り紙では練習中に比べ練習後でβ波の増加が認められ,あやとりよりも折り紙の方が動作パターンを記憶して行うことで中心部・頭頂部が活性化することが示された.自己評定の結果からは,練習中・練習後に関わらず折り紙に比べあやとりの方が集中して取り組んでいたことが示された.以上の結果から,動作パターンを記憶して行なった場合,あやとり・折り紙ともに意識的に手順を想起しながら行うことにより覚醒が高まること,あやとりに比べ折り紙は視覚情報への依存度が高く動作手順の遂行への集中を要することが示された.一方,自己評定の結果からは動作パターンを記憶しているかに関わらず折り紙よりもあやとりの方が集中していたと報告され,これは,あやとりは常に糸を一定の形に保たなければならないという活動特性によるものと考えられた.