著者
出口 亮 内田 健一郎 栗正 誠也 脇田 史明 羽川 直宏 野田 智宏 西村 哲郎 溝端 康光
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.291-296, 2022-07-20 (Released:2022-07-20)
参考文献数
16

患者は72歳の男性. 4m下の道路に墜落し, 鈍的頸部外傷を受傷した. 頸髄損傷に加えて第6頸椎レベルでの右椎骨動脈閉塞と左椎骨動脈損傷を認めたが, 併存する頭部外傷により抗血栓療法の早期開始は見送られた. 第6病日より抗凝固療法を開始したが, 第19病日の頭部MRI検査で左出血性小脳梗塞および左椎骨動脈閉塞を認めた. 椎骨動脈損傷の治療は早期の抗血栓療法が中心となるが, 他の併存する外傷のために抗血栓療法を導入できない時期には, 後方循環の脳梗塞を回避するため早期のコイル塞栓術の検討も必要と思われた. また抗血栓療法の導入に併せ少なくとも7~10日は経時的な画像検査を行い, 損傷血管の血流について評価する必要があると考えられた.
著者
田口 博一 山村 仁 溝端 康光 加賀 慎一郎 野田 智宏 晋山 直樹 安田 光宏
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.320-324, 2012-07-20 (Released:2020-08-19)
参考文献数
7

外傷性心肺停止は出血が原因のことが多く, 大量輸液は迅速かつ有効に施行されなくてはいけない. しかし, 確立された投与方法は存在しない. 今回われわれは, 心臓手術における右心耳からのカニュレーションをヒントに外傷性CPA例に対して右心耳内輸液を行い, その有用性を検討した. 対象・方法 : 2009年4月1日~2010年12月31日に当センターに搬送された来院時外傷性CPA30例中20例 (平均年齢47.3歳, 男性 : 女性=15 : 5例) で, 右心耳内10例に対して末梢静脈路10例で点滴量 (総量・分時量), 投与開始までの時間, 心電図変化, 心拍再開等を比較検討した. 結果 : 分時点滴量に関して, 右心耳内が末梢静脈路に比較して大量投与可能であった (p<0.05). 投与開始までの時間, 心電図変化, 心拍再開に関して有意差はなかった. 右心耳内輸液は, 時間を要さずに大量輸液を行うことが可能なことが示唆された.