著者
竹内 若菜 松浦 裕司 櫻谷 眞佐子 山村 仁
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.935-941, 2022-12-28 (Released:2022-12-28)
参考文献数
7

目的:本研究では小児の年齢や身長・体重に応じ適切な医療資器材や薬剤投与量を記載した小児用のファイルをドクターカーに導入し,その有用性を検討することを目的とした。方法:2014年7月〜2021年7月の期間における14歳以下の小児のドクターカー出動症例のうち,気管挿管とアドレナリン投与を要した心肺停止症例を対象とした。小児ファイルの使用の有無で,挿管チューブ挿入長・帰院後のチューブ調整の有無を比較検討した。アドレナリン投与量に関しては,体重が不明な現場での投与量が許容範囲内であったかを検討した。また,同乗看護師に対してアンケート調査を行った。結果:小児ファイル使用群で,位置不良で再調整を行った症例が減少した。アドレナリン投与量に関しても,許容範囲内で投与できていた。アンケート結果からは,ファイルを参照したことで,診療チーム内での認識統一や,準備時の混乱の軽減につながっていたことが明らかとなった。結論:小児ファイルはプレホスピタルにおいて,医療資器材や薬剤の準備と診療を正確に行うことにつながり有用であった。
著者
野々木 宏 安田 康晴 今井 寛 太田 祥一 小澤 和弘 木下 順弘 小林 誠人 高階 謙一郎 森村 尚登 山野上 敬夫 山村 仁 脇田 佳典 横田 順一朗
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.800-805, 2019-08-15 (Released:2020-10-26)
参考文献数
15

ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)の発症から再灌流療法までの時間を短縮するためには,病院前12誘導心電図記録の病院への事前伝達が有効であり,ガイドライン勧告がなされている.ガイドライン勧告の実践がなされているか救急隊による12誘導心電図記録と伝送の実態を把握するため,全国地域メディカルコントロール(MC)協議会251団体へのアンケート調査を実施した.回答率は96%で救急隊による12誘導心電計を搭載しているのは82%と高率であったが,全車両に搭載しているのは28%と低率であった.12誘導心電計を搭載している196団体のうち,電話による病院への事前伝達を行っているのは88%と高率であったが,伝送しているのは27%と低率であった.本アンケート結果から,ガイドライン勧告の実践を実現するためには,12誘導心電計の搭載とともに,地域MC協議会を中心とした救急隊と病院群との連携,プロトコル作成や心電図検証が必要であり,それには救急医とともに循環器医の地域MC協議会への関与が必要であると考えられる.
著者
山村 仁 高橋 誠 仲村 光世 溝端 康光 西澤 聡 李 栄柱
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.63-66, 2011-01-01 (Released:2011-07-20)
参考文献数
11

麻酔導入後に用いた薬剤が原因と考えられるアナフィラキシーショックから心停止に至った症例を経験した。患者は55歳,男性で,食道癌根治術予定であった。麻酔導入後に抗菌薬とステロイドを投与した際に,アナフィラキシーショックを起こし血圧が低下した。心肺蘇生を行い約24分後に心拍が再開し,経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support, PCPS),大動脈内バルーンパンピング (intra-aortic balloon pumping, IABP)などを用いた全身管理の結果,第4病日にPCPSより離脱し,第8病日に抜管でき後遺症なく救命できた。心拍再開にアドレナリンは無効であり,バゾプレッシン投与が有効であった。麻酔中の心停止であったため,心拍再開まで絶え間ない心肺蘇生を行えたこと,心拍再開後に直ちにPCPSを開始できたこと,などが後遺症なく救命できた要因と考えられた。
著者
田口 博一 山村 仁 溝端 康光 加賀 慎一郎 野田 智宏 晋山 直樹 安田 光宏
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.320-324, 2012-07-20 (Released:2020-08-19)
参考文献数
7

外傷性心肺停止は出血が原因のことが多く, 大量輸液は迅速かつ有効に施行されなくてはいけない. しかし, 確立された投与方法は存在しない. 今回われわれは, 心臓手術における右心耳からのカニュレーションをヒントに外傷性CPA例に対して右心耳内輸液を行い, その有用性を検討した. 対象・方法 : 2009年4月1日~2010年12月31日に当センターに搬送された来院時外傷性CPA30例中20例 (平均年齢47.3歳, 男性 : 女性=15 : 5例) で, 右心耳内10例に対して末梢静脈路10例で点滴量 (総量・分時量), 投与開始までの時間, 心電図変化, 心拍再開等を比較検討した. 結果 : 分時点滴量に関して, 右心耳内が末梢静脈路に比較して大量投与可能であった (p<0.05). 投与開始までの時間, 心電図変化, 心拍再開に関して有意差はなかった. 右心耳内輸液は, 時間を要さずに大量輸液を行うことが可能なことが示唆された.