- 著者
-
野間 昭典
- 出版者
- 公益財団法人 日本心臓財団
- 雑誌
- 心臓 (ISSN:05864488)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.3, pp.236-243, 1997-03-15 (Released:2013-05-24)
- 参考文献数
- 29
この総説では,心洞房結節細胞における自発活動電位のイオン機序について,我々がこれまでに報告した主な論文を中心に概説する.拡張期緩徐脱分極に関係する電流として多くの電流系が報告されているが,これらは大きく2つのグループ,即ち,いわゆる背景電流と,膜電位と時間に依存したゲーティングを示すイオンチャネル電流に分類できる.膜電位変化を能動的に誘発するのは後者であるが,心ペースメーカー細胞では以下のようなチャネルが報告されている.遅延整流Kチャネル,特にE4031などでブロックされる速いコンポーネントは先行する活動電位脱分極で活性化され,最大拡張期電位の後,時間とともに脱活性化される.L型Caチャネルは活動電位脱分極によって不活性化されるが,再分極の後,拡張期に時間依存性に不活性化から解除される.僅かに,いわゆるwindow current成分が存在する場合には,Ca電流の大きさが徐々に大きくなる.拡張期の後半1/3では徐々に活性化が進み,活動電化の立ち上がりにスムースに移行する.T型Caチャネルは-50mV位に活性化の閾値を示すので,一部のチャネルは拡張期脱分極中,活性化される.持続性内向き電流が拡張期脱分極の電位範囲で活性化することが最近報告されているが,この電流は不活性化が極めて遅く,流れ続けることができることから,拡張期脱分極に寄与していると考えられる.最後に,過分極で活性化する非選択性陽イオンチャネル(If)が-60 mV付近で僅かに活性化される.背景電流としては,Na依存性の背景電流, Na/Kポンプ電流,Na/Ca交換電流などが主な成分であると考えられる.