著者
金 慶姫
出版者
静岡県立大学経営情報イノベーション研究科
雑誌
経営情報イノベーション研究 = Reveiw of management and information of innovation (ISSN:21872325)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-20, 2018-10

韓国では、 急速な高齢化とともに人間関係の希薄化が進んでおり、 孤立する高齢者が増えている。 韓国の高齢者の社会的孤立度は OECD 主要国の中で1位となっており、 社会的孤立問題は重要な政策課題となっているものの、 韓国において社会的孤立に関する議論はほとんど行われず、 その定義は論者によって異なっているため、 適切な政策につながりにくい。そのため、 本稿では、 日本と韓国における社会的孤立の現況を把握し、 両国において社会的孤立がどのようにとらえられているかについて比較した。 その手がかりとして、 社会的孤立と関連する日本の中心的な先行研究や調査と、 韓国の先行研究や調査を用いた。本研究の結果、 日本と韓国は欧米とは異なり、 社会的孤立の結果として高齢者の孤独死が増加しており、 これは日韓両国に特有の現象であると考えられる。 日韓とも高齢者の孤独死は年々増加しているが、 それに対するアプローチには違いがある。 韓国では各自治体で条例を制定するなど法律の面で積極に取組んでいるが、 その対象者は低所得の高齢者に限られているなど、 まだ社会全体の問題として捉えていない。 また、 韓国は経済危機の影響を大きく受けており、 貧困と社会的孤立問題が深く関連付けられている。 それに対して、 日本では、 人間関係の希薄化による社会全体の問題として広く捉えており、 地域のつながりを回復することに重点を置いて政策が講じられている。日韓はよく似た社会的背景のもとで、 社会的孤立が進行し、 その結果として高齢者の孤独死が増加している現象がある。 類似している社会的孤立問題に関して、 両国における様々なアプローチやとらえ方についての比較研究は、 お互いに有効な政策を立てる上で大きな意義をもつと考えられる。