著者
山中 雄次
出版者
静岡県立大学経営情報イノベーション研究科
雑誌
経営情報イノベーション研究 = Reveiw of management and information of innovation (ISSN:21872325)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.13-40, 2019-10

本稿は、 海外の先行研究を参考に、 わが国の都道府県の行財政改革大綱等を対象とした内容分析 (Content Analysis) により、 国の方針のもとで NPM が推進されていた2005年当時と2018年時点の NPM の記載状況を比較した。 その結果、 わが国の都道府県は2005年当時でも NPM のワード自体の記載あるいは NPM 全要素の記載を行うことは限定的だった。 そのような中でも、 "市場機構の活用"のうち"民間委託"及び"指定管理者制度"には積極的な姿勢がみられた。 その後2018年は NPM のワード自体が見られなくなった。 また、 "成果志向"には前向きな姿勢が残るものの、 "顧客志向"及び "組織内分権"の記載は減少し、 "市場機構の活用"もトーンダウンした。 一方、 Post-NPM とされる多様な主体とのネットワークを示す"協働等"の記載のうち、 "水平的ネットワーク"を意図するものは、 2005年、 2018年ともにみられた。 ただし、 "水平的ネットワーク"と NPM の思潮を汲んだ契約関係に基づく"垂直的ネットワーク"の同一視が進み、 協働等の意図する概念に拡大がみられるなど、 協働等に NPM が影響を与えてきた可能性も残る。 本研究から、 わが国の都道府県では、 NPM から Post-NPM へと概念が入れ替わったのではなく、 実際は NPM として導入された取組は取捨選択され、 適する形に組み込まれ、 運用されていると考えられる。
著者
金 慶姫
出版者
静岡県立大学経営情報イノベーション研究科
雑誌
経営情報イノベーション研究 = Reveiw of management and information of innovation (ISSN:21872325)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-20, 2018-10

韓国では、 急速な高齢化とともに人間関係の希薄化が進んでおり、 孤立する高齢者が増えている。 韓国の高齢者の社会的孤立度は OECD 主要国の中で1位となっており、 社会的孤立問題は重要な政策課題となっているものの、 韓国において社会的孤立に関する議論はほとんど行われず、 その定義は論者によって異なっているため、 適切な政策につながりにくい。そのため、 本稿では、 日本と韓国における社会的孤立の現況を把握し、 両国において社会的孤立がどのようにとらえられているかについて比較した。 その手がかりとして、 社会的孤立と関連する日本の中心的な先行研究や調査と、 韓国の先行研究や調査を用いた。本研究の結果、 日本と韓国は欧米とは異なり、 社会的孤立の結果として高齢者の孤独死が増加しており、 これは日韓両国に特有の現象であると考えられる。 日韓とも高齢者の孤独死は年々増加しているが、 それに対するアプローチには違いがある。 韓国では各自治体で条例を制定するなど法律の面で積極に取組んでいるが、 その対象者は低所得の高齢者に限られているなど、 まだ社会全体の問題として捉えていない。 また、 韓国は経済危機の影響を大きく受けており、 貧困と社会的孤立問題が深く関連付けられている。 それに対して、 日本では、 人間関係の希薄化による社会全体の問題として広く捉えており、 地域のつながりを回復することに重点を置いて政策が講じられている。日韓はよく似た社会的背景のもとで、 社会的孤立が進行し、 その結果として高齢者の孤独死が増加している現象がある。 類似している社会的孤立問題に関して、 両国における様々なアプローチやとらえ方についての比較研究は、 お互いに有効な政策を立てる上で大きな意義をもつと考えられる。