- 著者
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川添 裕子
金 振晩
金 宰郁
- 出版者
- 松蔭大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
本研究は,日韓の美容整形の展開を政治経済の文脈に位置づけ,日本の「普通」感覚・理想美の変化,及び90年代以降の韓国における美容整形展開の経緯を明らかにすることを目的としている.29年度,日本では,明治以前にさかのぼって医療史,美の変遷を概観し,文献,関係者への聞き取りから医療行政の面について考察を行った.医療観光のコンテンツとしては,消極的なクリニックの方が多いと考えられる.整形経験者には,極めて限られた人数ではあるが,継続して聞き取り調査をしている.90年代末には,美容整形のブレーキでもあった「普通」文化は,既に,反転して美容整形促進に向いているように思われる.歴史と突き合わせると,儒教規範は,近代的身体観と伝統的規範の橋渡しという役割と終えたと見ることはできるが,相変わらず日本の整形経験者の秘匿意識は高いので,さらなる考察が必要である.韓国については,関係学会への聞き取りから,日本同様の形成外科とそれ以外の医師による組織的な対立が顕在化しつつあるのが明らかになった.また美容整形をテーマにしている研究者と意見交換を行った.29年度から加わってもらった研究分担者を介して,韓国の美容整形クリニック院長への聞き取りを行った.韓国,日本,中国の患者の差異については,30年度に外科医及び経験者の聞き取りを加えて分析する.韓国における医療観光政策は,同じく29年度から加わってもらった研究分担者に協力を依頼している.30年度に,共同で聞き取り調査を実施して,まとめに入る予定である.なお,英国Palgrave Macmillan社の「Palgrave Studies in Fashion and the Body」シリーズ刊行を目標とする国際共同研究に加入した.成果の英文発表,ネット公開の着手を始めた.