著者
藤巻 洋 中澤 明尋 竹内 剛 門脇 絢弘 草山 喜洋 井出 学 金井 研三 金 由梨 松原 譲二 稲葉 裕
出版者
日本関節病学会
雑誌
日本関節病学会誌 (ISSN:18832873)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.14-21, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
12

目的 : 人工膝関節全置換術 (TKA) 前後の立位下肢アライメント左右差が脚長差に及ぼす影響を調査すること。方法 : 調査対象は初回片側TKAを施行した74例で手術時年齢は平均73歳。TKA術前および術後3週に両側の下肢全長立位2方向単純X線像を撮影し, 正面像で下肢機能軸 (大腿骨頭中心と足関節中心を結ぶ線) の長さ (MA長) および下肢機能軸の膝関節面通過点の膝関節中央からの偏移 (MAD) を, 側面像でknee flexion angle (KFA) を計測した。術前後での各計測値の左右差を調査し, さらに術前後それぞれでMADおよびKFA左右差がMA長左右差に及ぼす影響を単変量および多変量で解析した。結果 : 術前にMA長左右差と有意に関連したのは単回帰分析でMAD左右差 (R=−0.31, P=0.003) およびKFA左右差 (R=−0.51, P<0.001), 重回帰分析でもMAD左右差 (P<0.001) およびKFA左右差 (P<0.001) であった (修正R2=0.43)。術後にMA長左右差と有意に関連したのは単回帰分析でMAD左右差 (R=−0.39, P<0.001) およびKFA左右差 (R=−0.58, P<0.001) で, 重回帰分析でもMAD左右差 (P<0.001) およびKFA左右差 (P<0.001) であった (修正R2=0.50)。考察 : TKA前後で冠状面および矢状面の立位下肢アライメントが脚長差に影響しており, 片側TKA後には脚長差が生じる可能性を認識する必要がある。