著者
星 秋夫 稲葉 裕
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.730-736, 1995-08-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
23
被引用文献数
6 9

1898年から1991年までに幕内に入幕した力士664名を対象に,力士の年齢標準化死亡比(SMR)について同時代の日本人男性と比較した。さらに,1898年以降の出生者を対象として死亡率に対する種々の要因の寄与の推定を行った。その結果は以下の通りである。1.力士のSMRはいずれの年次においても有意に高く,年齢階級別にみると,35∼74歳のSMRが有意に高かった。2.Coxの比例ハザードモデルによる解析から力士の死亡率に寄与する要因として,入幕暦年,BMIが抽出された。3.生存率曲線において,入幕暦年の高値群,BMIの低値群はそれぞれ低値群,高値群よりも生存率が高かった。以上の結果から相撲力士の高い死亡率は35∼74歳の高い死亡率によるものと示唆され,力士において,BMIの高値群は死亡のリスクが高いことが明らかとなった。
著者
星 秋夫 稲葉 裕
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.85-92, 2002-02-01
参考文献数
24
被引用文献数
12 4

本研究では近年13年間 (1986~1998) における学校管理下での体育・スポーツ活動中における外因性死亡の発生状況について検討し, 以下のような結果を得た.<BR>1) 過去13年間における外因性死亡事故の発生は295件, 年平均22.7件であり, 全体の約52%が外傷によるものであった.いずれの外因においても女子より男子での死亡件数が多かった.<BR>2) 外傷, 熱中症はそれぞれ進学するにしたがって増加するが, 溺水は各学校で同様に発生した.高校において, 外傷と熱中症の発生は高学年時よりも低学年時で高い傾向にあった.<BR>3) 外傷, 熱中症においては大部分が運動部活動時に発生したが, 溺水では大部分が体育授業時に発生した.<BR>4) 外傷の発生は柔道が最も多く, 以下ラグビー, 野球等であった.溺水は水泳であり, 熱中症は野球, サッカー, 柔道等であった.また, 外傷による死因は約74%が頭部外傷による死亡であった.<BR>5) ICD-10による分類において, 外傷で最も多かったのは投げられ, 投げ出されまたは落下する物体による打撲 (W20) 54件であり, 以下スポーツ用具との衝突または打撲 (W21) 33件, 他人との衝突 (W51) 20件等であった.溺水では水泳プール内での溺死および溺水 (W67) 49件等, 熱中症は自然の過度の高温への暴露 (X30) 69件であった.<BR>6) 外傷による死因で最も多い柔道における外因の大部分はW20であった.また, ラグビー, アメリカンフットボールの大半はW51, 野球, サッカーの大半はW21であった.<BR>以上のことから, 発生事例の多い運動種目においては発生防止に対して十分に注意を払うとともに, 基礎練習の充実等, 予防策を講ずる必要がある.
著者
千葉 百子 大道 正義 稲葉 裕
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.572-579, 1999-01-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
18
被引用文献数
7 10 7

This report reviews the biological effects and case reports of suicidal or accidental ingestion of, and occupational exposure to sodium azide. Ingested doses of sodium azide were estimated for the 6 survival and 4 fatal cases studied. The lowest dose among survival cases was 5-10mg. The patient reported headache, sweating, and faintness within approximately 5 minutes of ingestion. Four victims ingested 20 to 40mg and recovered within 2 hours. However, a man who took 80mg reported chest pain for 6 months after ingestion. The smallest doses among fatal cases were 0.7-0.8g for women and 1.2-2g for men. All victims suffered from hypotension, tachycardia, hyperventilation, diaphoresis, vomiting, nausea, and diarrhea. There is no antidote for sodium azide. Detoxicants for cyanide such as sodium nitrite or thiosulfate were tried, but were unfortunately, ineffective. Sodium nitrite may worsen the hypotension caused by sodium azide, and is not recommended. Occupational exposure to sodium azide is thought to be common, however, fatal exposure is rare. NIOSH “Recommended Exposure Limits” for sodium azide is 0.3mg/m3.
著者
星 秋夫 中井 誠一 金田 英子 山本 享 稲葉 裕
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.175-184, 2010 (Released:2010-12-17)
参考文献数
24
被引用文献数
2

本研究は人口動態統計死亡票を用い,熱中症死亡の地域差について検討した.さらに,ICD-10 適用前・後(以降 ICD-10 前後と略)における熱中症死亡の差異についても検討した. 1975年~2007年までの33年間における熱中症による死亡数は5,877人であり,年平均の死亡数は178人/年であった.ICD-10 後の死亡率,年齢調整死亡率は ICD-10 前よりも有意に高値を示した.また,いずれの年齢階級においても ICD-10 後の死亡率は ICD-10 前よりも有意に高値を示した.死亡の発生場所において,スポーツ施設,その他明示された場所を除くすべての場所で ICD-10 前よりも ICD-10 後に発生割合が増加した.しかし,スポーツ施設,その他明示された場所においては ICD-10 後,その発生割合は急激に低下した. 死亡率は秋田県が最も高く,次いで鹿児島県,群馬県となる.これに対して,北海道の死亡率は最も低く,神奈川県,宮城県で低値を示した.各都道府県における人口の年齢構成の影響を除くために,年齢調整死亡率をみると,沖縄県が最も高くなり,ついで鹿児島県,群馬県となり,北海道,神奈川県,長野県が低値を示した.最高気温/年と死亡率,年齢調整死亡率との間には高い有意水準で相関が認められ,年最高気温の差異は各地域の熱中症死亡に影響をもたらす要因の一つであることが認められた. 以上のことから,熱中症の死亡率や年齢調整死亡率は日本海側で高く,太平洋側で低い傾向を示すとともに,内陸に位置する群馬県,埼玉県,山梨県で高値を示した.また,沖縄県,鹿児島県で高く,北海道で低いことが認められた.このような熱中症の死亡率や年齢調整死亡率の都道府県の差異は夏季の暑熱環境の差,いわゆる熱ストレスの差に起因していると考えられる.
著者
鈴木 大地 松葉 剛 稲葉 裕 白石 安男
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.415-426, 2006-09-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
44

目的: 近年プールを設置する自治体が増えており, 水泳や水中運動を健康づくり事業に取り入れるケースも増えている. 当研究は水泳や水中運動がどのように住民の生活習慣や健康状態に影響しているかを調べることを目的に行った. 方法: 2004年K市において健康関連イベントおよびこれまで水泳. 水中運動事業に参加している257名を対象に質問紙による調査および血圧, 内臓周囲脂肪, 血液生化学データ (血算, 肝機能, 血清脂質, 血糖) の測定を行った. 結果と考察: 対象者を運動習慣により〈水中運動群〉〈水中運動以外の運動群〉〈運動習慣のない群〉の3群に分け, 心理的要因, 食事, 血液生化学検査を含む身体的要因について分布の差について調べた. 心理的要因については, 健康状態や生活満足度, 幸福感をたずねた質問では良好であるとの回答が水中運動群および水中運動以外の運動群に多く統計学的有意差が認められた (p<0.01). また食習慣的要因では水中運動群および水中運動以外の運動群で〈塩辛い食事〉を好まない傾向が認められた (p<0.05). 血液生化学データのうちHDLコレステロールの値について水中運動群と水中運動以外の運動群, および水中運動群と運動習慣のない群の間に有意差を認め, いずれも水中運動群が高値を示した (水中運動群73.2mg/dl, 水中運動以外の運動群63.2mg/dl, 運動習慣のない群63.2mg/dl, いずれもp<0.01). その他, 収縮期血圧において同様に水中運動群と水中運動以外の運動群, および水中運動群と運動習慣のない群の間に有意差を認め, いずれも水中運動群が低値を示した (水中運動群73.3mmHg, 水中運動以外の運動群78.1mmHg, 運動習慣のない群79.4mmHg, いずれもP<0.01). また健康な生活に与える影響について他の生活習慣との関わりを知るために, 因果モデルを作成し共分散構造分析にて分析を行った. その結果, 定期的な運動習慣のなかでも水中運動が, 健康な生活との間により強い関連があることが示された.
著者
星 秋夫 稲葉 裕 村山 貢司
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.3-11, 2007 (Released:2007-07-02)
参考文献数
22
被引用文献数
5

東京都と千葉市における 2000~2004 年の熱中症発生について解析した.熱中症発生率は東京都(人口 10 万対:4.4 人)よりも千葉市(9.4 人)で高かった.年齢階級別熱中症の発生は両都市共,5~19 歳と 65 歳以上とに,発生のピークを示す二峰性を示した.5~19 歳における熱中症発生は東京都,千葉市共に平日よりも日曜日,祭日で多かった.千葉市において,スポーツ時の発生は大部分が 5~19 歳であった.高齢者(65 歳以上)では大部分が生活活動時に発生した.熱中症の発生した日の日最高気温分布は東京都よりも千葉市で低温域にあった.日最高気温と日平均発生率との間に東京都と千葉市にそれぞれ異なる有意な相関関係を認め,千葉市で急勾配であった.日最高気温時 WBGT 分布は東京都と千葉市で同様であり,東京都と千葉市における日最高気温時 WBGT と日平均発生率との間に有意な相関関係を認めた.多重ロジスティックモデルの結果,日最高気温時 WBGT,日平均海面気圧,日照時間,降水量の因子について有意性を認めた.
著者
篠原 厚子 千葉 百子 武内 裕之 木下 勝之 稲葉 裕
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.418-425, 2005-11-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
29
被引用文献数
1 3

Objective: The relationships between element concentrations and sperm parameters in semen samples were investigated.Methods: Semen samples (n=113) were donated voluntarily by male partners of infertile couples. The concentrations of fourteen elements (Na, K, P, Ca, Zn, Mg, Fe, Cu, Se, Mn, Sn, Co, Ni, and Cd) in semen were determined by atomic absorption spectrometry, fluorometry, or colorimetry. Element concentrations in seminal plasma and in sperm were also measured.Results: Element concentrations in semen were in the order Na>P, K>Ca>Zn>Mg>>Fe>Cu, Se>Mn>Sn, Ni, Co, Cd. When the samples were divided into two groups in terms of sperm concentration and number, the Se concentration in semen with normal parameter values (sperm concentration≥20×106 and sperm number≥40×106), 99.4±37.4ng/ml, was higher than that in semen with abnormal parameter values (sperm concentration≤20×106 and/or sperm number≤40×106), 72.1±33.9ng/ml (p<0.001). A clearer positive correlation between the Se concentration and the sperm concentration was observed in the sperm portion (r=0.853, p<0.001) than in semen (r=0.512, p<0.001) and seminal plasma (r=0.292, p=0.003). Statistically significant correlations were also observed between the concentration of Se, P, Zn, Cu, Fe, or Mn in semen, the sperm portion or seminal plasma and the sperm concentration, semen volume or abnormal morphology, although correlation coefficients were small.Conclusion: Among biologically essential elements in semen of infertile males, Se was a good indicator of sperm concentration; however, other trace elements did not indicate clear relationships between their concentrations and sperm parameters.
著者
池田 志斈 真鍋 求 小川 秀興 稲葉 裕
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.100, no.7, 1990

全国アンケート調査から得られた単純型およおび劣性栄養障害型表皮水疱症患者の身長・体重の値を統計学的に処理し,全国平均の値と比較した.その結果,1)単純型では女性の身長が全国平均値より有意(1%以下の危険率)に低い.しかし女性の体重,男性の身長・体重には有意の差を認めない.2)劣性栄養障害型では,男女とも身長・体重が全国平均値より有意(1%以下の危険率)に低い,などが示された.本疾患々者の成長発育状態及び栄養状態を把握し,十分な栄養を補給を行うことがなされるならば,本疾患々者の予後が比較的良好となることが期待できるものと思われる.
著者
千葉 百子 篠原 厚子 稲葉 裕 中山 秀英 林野 久紀 小出 輝
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.406-410, 1990-10-20 (Released:2014-11-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

体重減少, 全身倦怠感, 筋力低下を主訴として受診, ゲルマニウムを飲用していたことが判明した症例, および神経痛治療の目的でゲルマニウム含有粉末を摂取していたため精査を希望して受診した症例の2例について検査し, 次のような結果を得た. 1) 2症例ともに測定した組織, 臓器中に高濃度のゲルマニウムが検出された. この結果はゲルマニウム含有物質の服用歴を裏付けるものである. 2) ゲルマニウムの中毒作用として腎障害が知られているが, 症例1においては臨床的ならびに病理組織学的に横紋筋融解による明らかな急性尿細管壊死が認められた. 3) ゲルマニウムの中毒作用として筋力低下, 筋萎縮が知られているが, 今回の結果では筋肉内にゲルマニウムを検出し得なかったことから, 筋肉内蓄積性のものではないと考えられる. 4) 毛髪, 爪は経口的に摂取したゲルマニウムの排泄経路の一部である.
著者
稲葉 裕 野尻 宗子
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.319-333, 2006-09-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
61
被引用文献数
1 1

アスベスト (石綿) は古くから人の生活と関係していたが, 建設資材や断熱材として急速に需要は増加した. 6種類の鉱物の総称であるが, 主なものは青・茶・白石綿の3つである. 石綿による健康障害は, 石綿肺, 肺癌そして胸膜・腹膜中皮腫である. 石綿と中皮腫の関連については1960年頃から鉱山労働者, 次いで断熱材製造・解体・修理業労働者などで認められ, さらに最近では労働者の家族, 工場周辺の住民など傍職業曝露へと拡大してきた. リスク比は傍職業曝露でも4.8-11.5とかなり高い. 職業性曝露でも診断されるまでの期間は通常30年以上であり, 使用禁止になってからも患者の発生は増加を続ける. 日本では1970年代から患者発生がみられ, 増加傾向がいちじるしい. しかし, その研究はまだ始まったばかりであり, 2006年の新制度の発足とともに疫学研究の充実が期待されている.
著者
藤巻 洋 稲葉 裕 小林 直実 雪澤 洋平 鈴木 宙 池 裕之 手塚 太郎 平田 康英 齋藤 知行
出版者
Japanese Society for Joint Diseases
雑誌
日本関節病学会誌 (ISSN:18832873)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.17-22, 2013 (Released:2014-06-26)
参考文献数
12

Objective: The aims of the present study were first to investigate the frequency and location of bone cysts in the acetabulum of hip osteoarthritis (OA) patients and second to examine the influence of pelvic tilt on the location of bone cysts in the acetabulum.Methods: A total of 80 patients (65 women and 15 men) with hip OA who underwent primary total hip arthroplasty were included in this study. The mean age at surgery was 65 years (range, 43-83 years). The bilateral hips of these 80 patients were examined; however, 9 contralateral hips that had previously been implanted with prostheses were excluded. We evaluated the minimal joint space width (MJS) on preoperative antero-posterior radiographs of the pelvis in the standing position. We also obtained the digital imaging and communication in medicine (DICOM) data from the preoperative pelvic computed tomography (CT) images, and then three-dimensionally reconstructed the DICOM data using OrthoMap 3D software with reference to the anterior pelvic plane. We divided the acetabulum into six areas and examined the presence of bone cysts in each area. We also examined the degree of pelvic tilt with three-dimensionally reconstructed CT images.Results: The frequency of bone cysts on CT images increased when the MJS of the hip joint on radiographs of the pelvis was less than 2 mm (p < 0.05). In the total of 151 hips, the antero-lateral area of the acetabulum (88 hips, 58%) exhibited the highest frequency of bone cysts. Patients who had bone cysts in the anterior part of the acetabulum tended to have a larger value of pelvic retroversion than those who did not have cysts in the anterior part of the acetabulum; however, the difference was not significant.Conclusion: The antero-lateral area of the acetabulum, which exhibited the highest frequency of bone cysts, is thought to be susceptible to loading stress. We hypothesized that patients who have bone cysts in the anterior part of the acetabulum have larger retroversion of the pelvis than others; however, the difference was not significant. We need to investigate further to reveal the influence of pelvic tilt on the location of bone cysts.
著者
中井 義勝 久保木 富房 野添 新一 藤田 利治 久保 千春 吉政 康直 稲葉 裕 中尾 一和
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.729-737, 2002-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
8
被引用文献数
6

1999年の1年間に全国23施設を受診した摂食障害女性患者975人について,臨床背景,身体症状,精神症状と食行動異常,本人の状態と家族の状態,誘発因子につき調査し,神経性食欲不振症制限型(AN-R),同むちゃ食い/排出型(AN-BP),神経性大食症排出型(BN-P),同非排出型,特定不能の摂食障害の5群で比較した.各病型に持徴的な身体症状(AN-Rのうぶ毛密生,柑皮症,AN-BPとBN-Pの唾液腺腫脹や歯牙侵食等)があった.精神症状は各群に共通して出現率が多い項目(過剰適応,強迫傾向)と群間で有意差のある項目(肥満恐怖,対人関係不良,抑うつ等)があった.誘発因子はストレスとダイエットが2大因子であった.この資料は,摂食障害を専門としない人にもその診断に役立つと思われる.
著者
千葉 百子 稲葉 裕 篠原 厚子 佐々木 敏 下田 妙子 金子 一成
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

カザフスタンとウズベキスタンに跨るアラル海は琵琶湖の100倍、世界第4位の画積だったが、現在は約1/4の面積となり、20世紀最大の環境破壊といわれる。その結果、強い砂嵐が北西から南東にかけて吹くなど、気候変動も起きている。アラル海東側には原因不明の健康障害を訴える住民が増加した。2000年からこの地域の疫学調査に着手した。罹患率の高い貧血、呼吸機能障害、腎機能障害に関してその原因究明を行ってきた。腎機能に関してカドミウムによる障害ではないかと考えた。生体、食事、環境試料を分析したがカドミウムが原因とは考え難い。これまでに世界各地で採取した多数の飲料水を分析してきたが、この地域の飲料水中にはかなりのウランが含まれているものが多かった。そこで本研究ではウランを中心に健康被害調査を行った。2004年9月にクジルオルダ州の2村で無作為抽出した218名の学童を対象に調査を行った。そのうち155名が2005年2月の調査にも応じてくれた。対象学童から飲料水、尿、血液の提供を受けた。飲料水中ウラン濃度の高いものは約40μg/L、低いものは検出限界以下であった。全例の飲料水中および尿中ウランの相関係数はr=0.263であった。尿中クレアチニン(CR)濃度がウラン濃度と平行して増加していた。尿中蛋白濃度はウラン濃度の増加に伴って上昇したが(r=0.272)、NAGおよびβ2ミクログロブリンはウラン濃度と無相関であった。尿中の元素でウランと相関があったものはヒ素(r=0.608)とチタン(r=0.650)であった。飲料水中で有意な相関があった元素はストロンチウム(r=0.800)、鉄(r-0.719)およびカルシウム(r=0.719)であった。飲料水中ウランと腎臓機能障害の指標(NAG、β2MGなど)と直接関係するか否か今後も検討を続ける予定である。
著者
藤巻 洋 中澤 明尋 竹内 剛 門脇 絢弘 草山 喜洋 井出 学 金井 研三 金 由梨 松原 譲二 稲葉 裕
出版者
日本関節病学会
雑誌
日本関節病学会誌 (ISSN:18832873)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.14-21, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
12

目的 : 人工膝関節全置換術 (TKA) 前後の立位下肢アライメント左右差が脚長差に及ぼす影響を調査すること。方法 : 調査対象は初回片側TKAを施行した74例で手術時年齢は平均73歳。TKA術前および術後3週に両側の下肢全長立位2方向単純X線像を撮影し, 正面像で下肢機能軸 (大腿骨頭中心と足関節中心を結ぶ線) の長さ (MA長) および下肢機能軸の膝関節面通過点の膝関節中央からの偏移 (MAD) を, 側面像でknee flexion angle (KFA) を計測した。術前後での各計測値の左右差を調査し, さらに術前後それぞれでMADおよびKFA左右差がMA長左右差に及ぼす影響を単変量および多変量で解析した。結果 : 術前にMA長左右差と有意に関連したのは単回帰分析でMAD左右差 (R=−0.31, P=0.003) およびKFA左右差 (R=−0.51, P<0.001), 重回帰分析でもMAD左右差 (P<0.001) およびKFA左右差 (P<0.001) であった (修正R2=0.43)。術後にMA長左右差と有意に関連したのは単回帰分析でMAD左右差 (R=−0.39, P<0.001) およびKFA左右差 (R=−0.58, P<0.001) で, 重回帰分析でもMAD左右差 (P<0.001) およびKFA左右差 (P<0.001) であった (修正R2=0.50)。考察 : TKA前後で冠状面および矢状面の立位下肢アライメントが脚長差に影響しており, 片側TKA後には脚長差が生じる可能性を認識する必要がある。
著者
千葉 百子 大道 正義 稲葉 裕
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衞生學雜誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.572-579, 1999-01-15
参考文献数
18
被引用文献数
10

This report reviews the biological effects and case reports of suicidal or accidental ingestion of, and occupational exposure to sodium azide. Ingested doses of sodium azide were estimated for the 6 survival and 4 fatal cases studied. The lowest dose among survival cases was 5-10mg. The patient reported headache, sweating, and faintness within approximately 5 minutes of ingestion. Four victims ingested 20 to 40mg and recovered within 2 hours. However, a man who took 80mg reported chest pain for 6 months after ingestion. The smallest doses among fatal cases were 0.7-0.8g for women and 1.2-2g for men. All victims suffered from hypotension, tachycardia, hyperventilation, diaphoresis, vomiting, nausea, and diarrhea. There is no antidote for sodium azide. Detoxicants for cyanide such as sodium nitrite or thiosulfate were tried, but were unfortunately, ineffective. Sodium nitrite may worsen the hypotension caused by sodium azide, and is not recommended. Occupational exposure to sodium azide is thought to be common, however, fatal exposure is rare. NIOSH &ldquo;Recommended Exposure Limits&rdquo; for sodium azide is 0.3mg/m<sup>3</sup>.
著者
篠原 厚子 千葉 百子 中埜 拓 稲葉 裕
出版者
日本微量元素学会
雑誌
Biomedical Research on Trace Elements (ISSN:0916717X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.49-53, 2004 (Released:2005-04-08)
参考文献数
5

The concentrations of 48 kinds of major and trace elements in dry milk were determined by microwave-induced plasma mass spectrometry, atomic absorption spectrometry, or colorimetry. The order of the element concentrations in dry milk was K > Ca, P > Na > Mg >> Zn > Rb > Fe > Sr > Cu, Ba, Ni, Mo, Mn, As > Se, Co, Cr. Other elements determined were much lower or under detection limit. Element concentrations in fractions of milk (skim milk, butter milk, acidic casein, whey, whey protein concentrate (WPC), and milk mineral) were also determined. The concentrations of each element in these powdered samples were dependent on the fractions. Concentrations of Ca and Mg in skim milk, butter milk, whey and WPC were similar to those in dry milk, but those in acidic casein fraction were very low and those in milk mineral fraction were extremely high. The concentrations of P in milk mineral fraction were about twice of dry milk, and Na was almost the same, and K was lower than those in dry milk. The present study indicates that the milk mineral fraction is a good source of Ca and Mg.
著者
星 秋夫 稲葉 裕
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衞生學雜誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.730-736, 1995-08-15
参考文献数
23
被引用文献数
1 9

1898年から1991年までに幕内に入幕した力士664名を対象に,力士の年齢標準化死亡比(SMR)について同時代の日本人男性と比較した。さらに,1898年以降の出生者を対象として死亡率に対する種々の要因の寄与の推定を行った。<br>その結果は以下の通りである。<br>1.力士のSMRはいずれの年次においても有意に高く,年齢階級別にみると,35&sim;74歳のSMRが有意に高かった。<br>2.Coxの比例ハザードモデルによる解析から力士の死亡率に寄与する要因として,入幕暦年,BMIが抽出された。<br>3.生存率曲線において,入幕暦年の高値群,BMIの低値群はそれぞれ低値群,高値群よりも生存率が高かった。<br>以上の結果から相撲力士の高い死亡率は35&sim;74歳の高い死亡率によるものと示唆され,力士において,BMIの高値群は死亡のリスクが高いことが明らかとなった。