著者
金 秉俊
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.24-35, 2005-01

本論文は、1992年韓国で発生した殺人事件を素材にする。K警察官が犯人として逮捕されてから虚偽の自白をし、第1審および第2審において有罪判決(懲役12年)を受けた。その後上告し、最高裁の判決が下る前に真犯人が捕まった。Kが無罪で釈放されるまでの過程を通し、彼の虚偽自白をめぐる関係者たちの構造と、虚偽自白が発生し、真実が明らかにされるまでの心理過程をフランスの精神分析家であるJacques Lacanの理論に従い、理解しようとしたものである。Lacanは主体($)と支配記標(S_1)、知識(S_2)、対象(a)の位置を中心に真理と関連した4つの談論を提示している。本論文では、K警察官の虚偽自白は、取調べ官たちの「主の語らい」と「科学の語らい」、被告人の「ヒステリ-の語らい」が結合して虚偽自白の壁を形成していると解釈した。そして、このような虚偽自白の壁を崩すための談論として、「分析家の語らい」の必要性とその条件および内容について述べた。