著者
金井 文彦 小俣 政男 横須賀 收
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.1727-1735, 2009 (Released:2009-12-07)
参考文献数
14

肝細胞癌に対して,血管新生阻害剤をはじめとする分子標的薬の開発が,世界中で進行中である.開発の先頭を行くsorafenibは,海外で行われた2つの試験で肝細胞癌の生命予後を改善することが初めて示された全身化学療法薬であり,本邦でも2009年5月肝細胞癌に対する適応を取得した.医療環境の異なるわが国での安全性·有効性が検証中である.分子標的薬の効果はいまだ限定的であり,他薬剤·肝動脈塞栓術との併用,術後補助化学療法としての有用性検討とともに,肝細胞癌の真の標的分子の同定や治療効果を予測するバイオマーカー探索などが重要課題である.分子標的薬の副作用プロファイルは,従来の細胞障害性の抗悪性腫瘍薬と全く異なり,使用にあたっては特に注意が必要である.