著者
金子 一夫
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.179-191, 2017 (Released:2019-09-03)
参考文献数
36

著者は今日の美術教育学研究における問題点を指摘し,その解決のため贈与交換論による美術教育学の再定義を提案した。論述を以下の三段階で行った。1.美術教育学の発生から現在に至る過程 2.美術教育学が本来備えるべき要件 3.美術教育学の問題とその解決方法の検討 1.で美術教育学の困難の外部的・内部的要因を指摘し,2.で美術教育学の要件は厳密な概念による美術教育現象の記述とした。3.で美術教育学の問題点として,主要な言説に1理論上の表現と学習と教育の区別がないこと,2理論上に表現者だけ存在し,教育内容,教師が存在しない不備を指摘した。その解決のため,教育,美術,美術教育を贈与交換の過程と再定義して,表現と学習と教育の区別,教育内容と教師の理論的再生を試みた。そして美術教育は教師,被教育者,教育内容・教材各々を下位要素システムとして交感するシステムと捉えられるとした。