著者
金子 昌子
出版者
茨城県立医療大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

研究1.〔目的〕震度5以上の地震発生時のICUにおける体験内容を明らかにする。〔方法〕震度5以上の地震を経験したICU看護師を対象に地震発生時の対応等について面接調査を行った。調査内容は、地震発生時の医療機器の動き,対処等をフリートーキングにより行った。〔結果及び考察〕震度5以上の地震をICU勤務中に経験した17名の看護師に協力を得た。勤務帯はいずれも深夜勤務帯であった。看護師1人当たり2〜3名の患者を受け持っていた。フリートーキングにより抽出された経験内容は、「1メートル以上の高さのある医療機器(透析機器・輸液スタンドなど)は揺れが大きく、転倒の危険を感じた」「輸液ボトルの落下の危険を感じた」「医療機器類のアラームは鳴らなかったがきしみや摩擦音など異常音を感じた」など12項目のカテゴリが抽出された。また対処行動は「患者の側に行った」「揺れの大きい医療機器を押さえた」など7項目が抽出された。以上の結果から、地震発生時ICU環境下において高さ1メートル以上の医療機器は不安定となり患者・看護師の安全性を脅かす危険性が高いことが明らかになった。研究2.〔目的〕揺れによる輸液スタンド転倒予防に向けた改善策を検討する。〔方法〕5脚輸液スタンドと輸液ポンプ装着位置による重心点と揺れによる動線を測定した。〔結果及び考察〕大型振動台上に(1)3脚輸液スタンド,(2)4脚輸液スタンド,(3)5脚輸液スタンド,(4)5脚輸液スタンドに輸液ポンプ設置の4種類の輸液スタンドを設置し、阪神淡路大震災時の揺れを(1)100%としてそれを基準に(2)50%,(3)125%,(4)150%,(5)200%で揺れを発生させ(1)一方向横,(2)一方向縦,(3)2方向,(4)垂直方向の4方向の加振を行い、動作解析を用いてそれぞれの動線を分析した結果、3脚輸液スタンドが転倒しやすく、5脚輸液スタンドが揺れによる影響が大きい。さらに輸液ポンプを装着している場合、装着側を軸として回転することが明らかになった。さらに安定性を確保するために重心計を用いて測定をした結果、輸液ポンプ位置は低位であるほど安定性は高くなるが、作業効率が低下する。そのため重心・動線と作業性の視点から検討した結果、輸液ポンプは輸液スタンドの中心点に設置することが望ましいと考えられた。