著者
金川 智惠
出版者
追手門学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、自己概念を対人的・文化的・時間的文脈の3点から総合的に検討することであった。study1では「主語」の様態が自己概念の状況即応的組織化に及ぼす影響を検討し、状況即応性の程度は主語の様態によること、study2では自己概念の状況即応的組織化の対人状況における適応的機能を検討し、(1)肯定的な自己側面へのアクセスが求められる状況と否定的な自己側面へのアクセスが要求される場合では、同じ個人であっても情動反応が異なり、(2)後者は前者に比べて自己評価が低く、またうつ気分等の否定的情動が支配的になること、しかしこの後肯定的な自己側面へのアクセス強化をすると、自己評価や肯定的情動が再度高まること、study3では、自己概念の組織化における時間経過の影響を検討し、自己概念の組織化は時間経過より状況の影響をより強く受けることを見出した。以上の結果、特に、Study2とstudy3の結果は、否定的感情が喚起された場合、その制御に自己概念の肯定的側面・要素へのアクセスを強化することが効果的であることを示しており、将来的には企業現場での予防的メンタルヘルスの実現への一助になると考えられる。