著者
金田 康秀
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.278-286, 2014 (Released:2015-03-30)
参考文献数
60

Vogt-小柳-原田病(原田病)は,本邦では2番目に多いぶどう膜炎である。自己のメラノサイトに対する自己免疫性疾患と考えられており,汎ぶどう膜炎に加え,中枢神経症状,内耳症状,皮膚症状をきたすことが特徴的である。標準治療は全身的なステロイド大量療法である。更に不十分なステロイド剤使用は再燃や遷延化を招く。今回,B 型肝炎ウイルスキャリアに初発した原田病に対し,ステロイド剤を一切使用せずに竜胆瀉肝湯(一貫堂)と五苓散の併用が奏効した一例を経験したので報告する。症例:40歳男性。両)霧視を主訴に近医眼科を受診し,両)黄斑症を認め当科に紹介。原田病と診断し,和漢診療学的に軽度の水滞・瘀血を伴う足厥陰肝経の湿熱と捉え,竜胆瀉肝湯(一貫堂)と五苓散を投与した。結果,翌日から徐々に視力が改善し始め,ステロイド剤を使用することなく治癒した。原田病に漢方単独の治療が選択肢になり得ることが示唆された。