著者
金目 哲郎
出版者
弘前大学大学院地域社会研究科
雑誌
弘前大学大学院地域社会研究科年報 (ISSN:13498282)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.45-56, 2021-03-24

本稿の課題は、新型コロナウイルス感染症がもたらす日本経済および地域経済へのダメージに対して、地方自治体がどのように対応していくのかを検討し、ポスト・コロナ時代における地方自治体の政策課題を提示することにある。本稿の構成は次のとおりである。第1節では、新型コロナウイルス感染拡大がもたらしている日本経済や地域経済の悪化の現状を、いくつかの指標で捉える。第2節では、近年に経験した経済的危機と、新型コロナウイルス感染症とでは、危機の性質が異なり、ゆえに地域経済の活性化に向けた、地方自治体の対応のしかたも異なることを指摘する。そのうえで、コロナ禍にあって、まずは地域経済の崩壊を防ぐための初期対応として緊急的に打ち出された地方自治体の政策の事例を紹介する。第3節では、現在のコロナ禍で、人びとや企業が大都市圏に集中する「東京一極集中」に変化の兆しがあることに言及する。ポスト・コロナ時代では、人びとや企業が地方圏に分散する、「地方分散型社会」に向かっていく可能性を指摘し、これを後押しするための地域経済活性化政策のあり方や、国と地方自治体との財政関係をめぐる課題を展望する。
著者
金目 哲郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.315-334, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
11

過去四半世紀にわたる地方財政計画の変遷について,主要な歳出項目別の時系列分析を行い,近年の計画の抑制的見直しについて評価を加える。この分析過程では,各項目の算定根拠として積み上げられた施策・事業の変化に着目する。分析の結果,1990年代前半までの地方財政計画の膨張は単独事業分,なかでも長期計画事業や新規事業の増額計上が顕著である。1990年代後半以降の抑制・減少は単独事業分の圧縮によるが,新規事業の整理縮小のみならず過疎対策事業といった毎年計上事業分の圧縮,給与関係経費といった経常経費の減額にまで及んでいる。単独事業分のなかでもナショナル・ミニマムに関わるものの財源保障の削減は懸念され,マクロの財源保障に幅を持たせておくことは地域的に顕在化する行政需要に応える意味でも重要である。