著者
鈴木 亜香音
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学総合研究所紀要 (ISSN:13405942)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.95-113, 2015-03-25

本稿は,元安寧学区絵図群,特に大工町を中心に,絵図から地籍図,そして旧公図への系譜を検討したものである。先行研究で指摘されてきた9種類の絵図のうち,記載項目の変化や加筆の有無を指標として検討した結果,大工町では「町組改正絵図」,「軒役改正絵図」,「大工町絵図」(「壬申地券地引絵図」と推定),「地租改正地引絵図(等級)」,「地籍編纂地籍地図」,「旧公図」の6種類が確認できた。その6種類の系譜的関係から,近世町絵図を出発点として,近代初期の町絵図から地籍図的な要素をもつ絵図,地籍図,そして旧公図への流れが確認できた。このことは,近代の地図として理解されてきた地籍図が,近世町絵図を近代的な土地管理への移行にあわせて改変したものであったことを意味している。また,近代的な地籍図への転換点が「壬申地券地引絵図」から「地籍編纂地籍地図」への変化にあったことが明らかになった。これは,図面と台帳との分化がここから進んでいったことにも現れているのである。