- 著者
-
鈴木 健一朗
- 出版者
- 日本乳酸菌学会
- 雑誌
- 日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.2, pp.49-59, 2000-12-01 (Released:2012-09-24)
- 参考文献数
- 46
生物を研究材料に使うとき,その分類学的な位置は,結果の生物間の比較のためだけでなく,研究成果の評価や,権利の範囲にも影響を与える重要な要素である。生物種を常に固定された学名で呼ぶことができたら,利用者にとっては便利であろう。しかし,分類学は生物の真の類縁関係や進化の過程を追求し,新しい体系を構築してする科学である。したがって同じ生物がひとつの論文を境にして名称を一変してしまうこともあり,困惑を生むことも少なくない。分類学には真実追究の科学であると同時にもう一つの役割がある。多くの分類学者がそれぞれ勝手な学名や体系を使っていたら,それは学問に何も貢献しないばかりか,分類学者の単なる道楽として見向きもされないであろう。そこで,命名規約という共通のルールに則って分類学の成果が発表され,その分類体系は生物学者に広く理解を得るものでなければならない。本解説では,乳酸菌の分類に例を取って,国際細菌命名規約の仕組みと現在の問題点を紹介する。