著者
鈴木 克夫 スズキ カツオ Katsuo Suzuki
雑誌
メディア教育研究
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-12, 1999

「遠隔教育(distance education)」とよばれるものには二つの種類がある。一つは、従来の通信教育(correspondence education)から漸進的に発展した遠隔教育であり、もう一つは、通信教育を出自とせず、メディアを利用してフェイス・トゥー・フェイスの環境をできるだけ忠実に再現しようとする遠隔教育である。この二つの遠隔教育の根本的な違いは、前者が、教育には対面教育と遠隔教育の二つの種類があって遠隔教育は対面教育とは異なる独自の教育形態であると考えるのに対して、後者は、教育は一つであって、遠隔教育はそれがたまたま離れて行われるだけで、独自の教育形態ではないと主張している点にある。前者を「自立学習型遠隔教育」、後者を「仮想教室型遠隔教育」と名づけることができる。マルチメディア技術の発達によって、対面教育(通学制の教育)と遠隔教育(通信制の教育)とのボーダレス化か論じられる中で、二つの遠隔教育の存在を認識し、その違いを十分に吟味することが、遠隔教育のみならず、今後の教育全体の在り方を考える上で重要である。