- 著者
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山下 敬郎
鈴木 孝紀
向井 利夫
- 出版者
- 公益社団法人 日本化学会
- 雑誌
- 日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
- 巻号頁・発行日
- vol.1986, no.3, pp.268-275, 1986-03-10 (Released:2011-05-30)
- 参考文献数
- 17
- 被引用文献数
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5
テトラシアノアントラキノジメタン[1](TCNAQ)はテトラシアノキノジメタン[4](TCNQ)のジベンゾ誘導体であり, [4]と同様な電子受容性が期待されたが平面をとり得ない分子である。著者らは[1]の二置換誘導体を合成し, 還元電位やアニオンラジカルの安定性に対する置換基効果を調べた。[4]にくらべ[1]に対する置換基効果は非常に小さく, [1]のアニオンラジカル, ジアニオンは9, 10-位でねじれた形であることを示す。[1]は非平面であるが種々の電子供与体と錯体をつくり, そのモル比はおもに立体的因子で規制される。[1]の立体障害を克服するため, ビス(チアジアゾロ)テトラシアノキノジメタン[2](BTDA-TCNQ)と(チアジアゾロ)テトラシアノナフトキノジメタン[3](TDA-TCNNQ)を合成した。[2]は平面な分子でテトラチアテトラセンと高導電性の錯体を形成し, [2-]は金属塩として単離できる。[3]のアニオンラジカルは熱力学に不安定で, 立体障害が残っていることを示す。