著者
鈴木 悠太
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.71-82, 2014

本研究はマクロフリンの研究の系譜における教師の「専門家共同体」の形成と展開を明らかにすることを課題とした。その成果は以下の3つの契機に即し総括される。<br> 第一に,スタンフォードCRC は教職の「文脈」を中心概念とする学校改革研究のナショナル・センターとして出発した。マクロフリンは「現に存在する制約の中で」専門性開発を「実現可能にする」ことを目指し,教職の「文脈」に照準を合わせた。<br> 第二に,教師の「専門家共同体」の概念は教職の「文脈」の鍵概念として形成された。「専門家共同体」は,様々な重荷を抱える「今日の生徒」に対峙する高校教師の授業実践が多様な展開を示していることを踏まえ,最も革新的な授業実践を追求する教職の「文脈」としてマクロフリンらが同定した概念であった。<br> 第三に,マクロフリンらの研究の成果は,授業の3類型を中心とし,教師共同体の3類型,教職キャリアの3類型の連関において定式化され,「専門家共同体」は教職の多層的な「文脈」の中に位置づけられるに至った。<br> これらを踏まえ,マクロフリンの研究の系譜における教師の「専門家共同体」は,教職の「文脈」の概念によって射程に収める,教師を中核とする多様な改革の担い手による学校改革の追求という構図の中にあり,あくまでも現存する制約の中で学校改革の実現可能性を追求するマクロフリンらの愚直な姿勢が鮮明となった。その中核に教師の「専門家共同体」の形成と展開があった。