- 著者
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鈴木 敏則
- 出版者
- 名古屋文理大学短期大学部
- 雑誌
- 名古屋文理短期大学紀要 (ISSN:09146474)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, pp.37-47, 1996-04-01
雇用における男女平等は我が国でも大きなテーマとなっていた。憲法第14条では個人の尊厳と両性の本質的平等を法における最高の価値として位置付けると同時に, 男女の性による不合理な差別を一切禁止している。これを受けた労働法規として, 労働基準法第3条の均等待遇の原則, 第4条の男女同一資金の原則が規定されている。これらの規定では「性別」の文言を欠き, これまでの判例でも賃金以外の労働条件に関しては性別を理由とする差別待遇は許されるのではないかという疑問を生じていた。一方, 日本の産業構造の変化も著しく, サービス経済化や事務労働OA化など女子労働力を必要としていた。女子労働者の側からすれば, 家事労働の機械化と子育て期間の早期終了, 女子の学歴高度化, 高収入志向, 住宅ローンや教育費のための共働きなど女子の就労を当然とみる社会的風潮が生まれてきた。こうした様々な背景の中で男女雇用機会均等法が1961年より施行された。この10年間で雇用の分野で性差別をしてはならないという認識が一般化し, 積極的に女性の能力を活用しようとする企業が増加している。しかし, 女性の職場は広がったものの, 男女の賃金格差や採用差別の改善は依然と進まず, 限界が指摘されている。この均等法はもともと成立時から努力義務という性格をもっていて, これに違反しての罰則はないという点で大きな問題点を含んでいた。これらから今秋には婦人少年問題審議会で均等法の見直しが始まることになっている。今後, 均等法は伝統的な固定概念や家事育児の役割を肯定した上での雇用慣行と男女平等の調和をはかるべく検討されなければならない。