著者
久保田 真弓 鈴木 有香
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.45-57, 2021 (Released:2021-10-29)
参考文献数
10

コロナ禍で急遽要求されたオンライン授業に不慣れな教員等を対象にZoom利用に関するワークショップが実施された。そこで本研究では,参加者の躓き要因をデザイン原則の観点から明らかにし,ワークショップの意義を提案する。異文化コミュニケーション学会が開催した1回2時間の初級(2回),中級(3回)の合計5回のワークショップを取り上げ,延べ参加者62名の躓き要因とデザイン原則との関連を分析した。ワークショップの内容は,初級レベル14項目,中級レベル12項目ある。そのうち,参加者の躓き要因は,「シグニファイア」,「制御感」,「想定外」,「重層構造」にまとめられた。「シグニファイア」による躓きは,記号や用語の使用方法であり,的確なフィードバックで解決する。一方,「制御感」「想定外」「重層構造」による躓きは,ユーザーの概念モデルの多様化が背景にあると考えられた。デザイナーが示すシステムイメージの変化にユーザーの利用習慣がついていけないのである。そこで,ワークショップでファシリテーターが参加者の潜在意識のレベルでの違和感を見抜き躓きに対応することで,デザイナーとユーザーの概念モデルのギャップを縮めることができることを提案した。