著者
西中川 駿 松元 光春 鈴木 秀作 大塚 閏一 河口 貞徳
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.157-166, 1982-03-19

南九州の古代にどのような動物が生息し, また, 古代人がどのような動物を狩猟し食していたか, さらには現生種との間に骨学的差異があるかなどを知る目的で, 今回は鹿児島県片野洞穴出土の哺乳類, 鳥類の骨を肉眼的ならびに計測学的に調査した.1.自然遺物は, 縄文後期から晩期の土器と共に出土し, 総出土量約10547gで, そのうち哺乳類が7204g(68%)で, 鳥類はわずか0.8gであり, その他貝類などであった.2.動物種や骨の種類を同定出来たものは, 773骨片で, それらはイノシシ, シカ, ツキノワグマ, イヌ, タヌキ, アナグマ, ノウサギ, ムササビ, サルおよびキジの6目10種であった.3.動物別出土骨片数をみると, イノシシが最も多く(53%), ついでシカ(38%)であり, その他の動物はそれぞれ2〜5%にすぎなかった.ツキノワグマの出土は貴重なものであり, 最大長186mmで, 両骨端の欠如していることから若い個体と推定した.4.骨の形状は, 各動物共に現生のものにほとんど類似し, また, 骨の大きさはシカ, ノウサギで現生種より幾分大きい傾向を示した.5.以上の観察から, 縄文後期から晩期の鹿児島県大隅地方には, 少なくとも6目10種以上の動物が生息していたことが伺われ, また, 古代人がイノシシ, シカをよく狩猟し, 食べていたことが示唆された.
著者
西中川 駿 鈴木 秀作 大塚 閏一
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.79-86, 1980-03-19

絶食がマウスの乳腺組織, 特に実質および脂肪組織と血管分布に如何なる影響を与えるかを検索するために, ICR-JCL雌マウスを用い, 処女(102例)および泌乳期(74例)の乳腺について観察した.検索方法は前報と同様である.1.成熟処女マウスの絶食後の体重は, 5日で約9gの減少がみられ, 乳腺および卵巣の重量は, 90日齢無処置のものの約1/3,1/2の重さであった.絶食1日目の乳腺の構造と血管分布は, 無処置のものと大差はなかった.絶食2日の乳腺は, 間質のunilocular脂肪細胞の一部に退行がみられ, これらに分布する血管に縮れがみえはじめた.3日では, 脂肪細胞の大きさや量は減少し, 血管は2日のものより退縮していた.4日の乳腺脂肪組織は, 脂質の消失により, 多くの腺様細胞からなり, 血管も著しく縮れていた.5日間の絶食では, 脂肪細胞の顕著な退化とbudや導管の部分的な退行によって, 乳腺域はせばめられ, また, 血管分布の密度も低く, 絶食4日のものより著しく縮れていた.2.泌乳マウスの絶食後の体重は, 6日で, 無処置のものより約13gの減少がみられ, 乳腺および卵巣の重量は, 無処置の約1/3,1/2の重さであった.絶食1日の乳腺構造は, 無処置のものと比べ, ほとんど差はなかった, 2日では, 乳腺実質の腺胞に崩壊がみられ, 脂肪細胞の出現もみられたが, 無処置のものより少なかった.絶食3日の腺胞は, 不規則な崩壊を示し, また, unilocular脂肪細胞の出現は2日のものより多くみられた.これらに分布する血管には縮れが生じていた.4日では, 腺胞の崩壊は著しく, 腺腔はみられなく, また, 脂肪細胞は完全に消失し, 血管分布密度も低く, 縮れていた.絶食5,6日では, 腺胞は退化上皮の塊としてみられ, また, 導管や小葉の周囲には, 結合組織の増加がみられた.これらに分布する血管は著しく退縮していた.3.以上の観察から, 処女期での絶食は, 脂肪組織とその血管分布に退縮を起こさせ, 泌乳期では, 腺胞の不規則な崩壊, 脂肪細胞の出現阻止ならびにその血管に退縮を起こすことが示唆された.