著者
西中川 駿 松元 光春 大塚 閏一 河口 貞徳
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.19-24, 1993-03-31

鹿児島の縄文46,弥生22遺跡の動物遺体の出土状況を調査し, そのうち31遺跡の哺乳類遺体について, 肉眼的ならびに計測学的に検索し, 出土動物種を明らかにした.1.出土した動物遺体は, 哺乳類, 鳥類, 爬虫類, 両生類, 魚類, 甲殻類および貝類のものであり, 貝類, 哺乳類の出土した遺跡が最も多く, 両生類は少ない.地域別では薩摩半島が28ヵ所で最も多く, 次いで南西諸島の22ヵ所である.時期別では, 縄文後, 晩期が40ヵ所で最も多く, 弥生が22ヵ所である.2.動物種の同定された哺乳類遺体は, モグラ, コウモリ, サル, ノウサギ, アマミノクロウサギ, ムササビ, ネズミ, ツキノワグマ, オオカミ, イヌ, タヌキ, アナグマ, カワウソ, テン, イタチ, オオヤマネコ, イエネコ, アシカ, イノシシ, シカ, カモシカ, ウシ, ウマ, クジラ, イルカおよびジュゴンの10目26種のものである.これらのうちイノシシ, シカが全体の97%(出土骨片数)を占め, 当時の鹿児島の狩猟獣の中心であったことが示唆された.なお, ウシ, ウマ, イエネコは同時代のものかは疑問視される.3.イノシシは県下の全遺跡で検出されたが, 南西諸島のものは県本土のものとは形状が異なり小型である.また, 南西諸島の遺跡からは, シカ, サル, タヌキ, アナグマなどの出土例はなく, トカラ海峡を境にすでに縄文時代から, 哺乳動物相が異なっていたことが示唆された.
著者
西中川 駿 松元 光春 大塚 閏一 河口 貞徳
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.147-157, 1983-03-15
被引用文献数
1

黒川洞穴出土の自然遺物, とくに哺乳類の骨を肉眼的ならびに計測学的に調査した.1.自然遺物の総重量は, 20455.5g(貝類を除く)で, そのうち哺乳類が全体の99%である.2.動物種や骨の種類を同定できたものは, 2059個の骨片で, それらはイノシシ, シカ, カモシカ, ツキノワグマ, オオカミ, イヌ, タヌキ, アナグマ, テン, イタチ, ノウサギ, ムササビ, モグラおよびサルの6目14種である.3.出土骨片数は, イノシシがもっとも多く(66%), ついでシカ(21%)であり, そのほかは13%である.オオカミ, ツキノワグマ, カモシカの出土は, 極めて貴重なものである.4.骨の形状は, 各動物ともに現生のものにほとんど類似し, また, 骨の大きさは, シカ, イノシシ, ノウサギで, 現生種より幾分大きい傾向を示した.5.以上の観察から, 縄文後期から晩期の鹿児島地方には, 少なくとも14種以上の哺乳類が生息していたことが伺われ, また, 縄文人がイノシシ, シカをよく狩猟し, 食べていたことが示唆された.
著者
西中川 駿 松元 光春 大塚 閏一 河口 貞徳
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.83-93, 1984-03-15

高橋貝塚出土の自然遺物, とくに陸棲哺乳類の骨を肉眼的ならびに計測学的に調査した.1.自然遺物の総重量は, 40963,0gで, そのうち, 陸棲哺乳類が全体の85.7%を占める.2.動物種や骨の種類を同定できたものは, 2811個の骨片で, それらはサル, ノウサギ, イヌ, タヌキ, アナグマ, テン, イノシシ, シカ, ウシ, ウマの5目10種である.3,出土骨片数は, イノシシでもっとも多く(60)%, ついでシカ(37%)であり, そのほかはわずか3%である, 4.骨の形状は, 各動物ともに現生のものにほとんど類似し, また, 骨の大きさは, シカ, イノシシ, ノウサギで, 現生種より幾分大きい傾向を示す.5.以上の観察から, 高橋貝塚を遺した人々は, イノシシ, シカをよく狩猟し, 食料としていたことが示唆された.
著者
西中川 駿 松元 光春 鈴木 秀作 大塚 閏一 河口 貞徳
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.157-166, 1982-03-19

南九州の古代にどのような動物が生息し, また, 古代人がどのような動物を狩猟し食していたか, さらには現生種との間に骨学的差異があるかなどを知る目的で, 今回は鹿児島県片野洞穴出土の哺乳類, 鳥類の骨を肉眼的ならびに計測学的に調査した.1.自然遺物は, 縄文後期から晩期の土器と共に出土し, 総出土量約10547gで, そのうち哺乳類が7204g(68%)で, 鳥類はわずか0.8gであり, その他貝類などであった.2.動物種や骨の種類を同定出来たものは, 773骨片で, それらはイノシシ, シカ, ツキノワグマ, イヌ, タヌキ, アナグマ, ノウサギ, ムササビ, サルおよびキジの6目10種であった.3.動物別出土骨片数をみると, イノシシが最も多く(53%), ついでシカ(38%)であり, その他の動物はそれぞれ2〜5%にすぎなかった.ツキノワグマの出土は貴重なものであり, 最大長186mmで, 両骨端の欠如していることから若い個体と推定した.4.骨の形状は, 各動物共に現生のものにほとんど類似し, また, 骨の大きさはシカ, ノウサギで現生種より幾分大きい傾向を示した.5.以上の観察から, 縄文後期から晩期の鹿児島県大隅地方には, 少なくとも6目10種以上の動物が生息していたことが伺われ, また, 古代人がイノシシ, シカをよく狩猟し, 食べていたことが示唆された.