著者
鈴木 紀之 洲合 隼輝 小林 皆登
出版者
Pro Natura Foundation Japan
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.118-125, 2020 (Released:2020-09-29)
参考文献数
16

ナミテントウは日本国内では北海道から九州にかけて分布しているが,近年になって沖縄本島と石垣島から国内外来種として記録された.南西諸島には近縁種のクリサキテントウが分布しているため,侵入先で競争関係が生じ,在来の群集に影響が出ると懸念される.そこで本研究では,南西諸島におけるフィールドワークにてクリサキテントウの生息環境を調べるとともに,ナミテントウの侵入の程度を調べた.また,形態によって区別できない個体について,遺伝子解析による同定を試みた.南西諸島のクリサキテントウは,本州の個体群と異なり,ガジュマルなどさまざまなニッチを利用していることが明らかになった.また,保管されているサンプルの遺伝子解析をしたところ,ナミテントウの石垣島への侵入が遅くとも2015年までさかのぼることが明らかになった.今後は,さらに安価かつ簡便に種を判別できる遺伝的手法を解析し,ナミテントウの侵入を高い精度で把握していく必要がある.