著者
鈴木 賢英
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.414-420, 1976-12-10 (Released:2014-11-21)
参考文献数
31

ICR系の妊娠マウスに6mgのcyproterone acetate (CA) を妊娠14日から20日まで皮下注射し, 妊娠20日に帝王切開で仔マウスを取り出し, 雄仔マウスは去勢後他の母親に哺乳させた. これら去勢された雌性化雄マウスを出生当日から10日間ゴマ油のみを皮下注射する群 (第1群), 20μgのエストラジオール-17β (ED) を皮下注射する群 (第2群), そして50μgのEDを皮下注射する群 (第3群) に分けた. 各群の動物は60日令で殺し, 通常の方法でH-E染色して検鏡した. 組織学的観察の結果, 全ての雌性化雄マウスに腔形成が認められたが, 尿道と腔の分離は不完全であった. 第1群の動物の腔上皮は萎縮的な重層立方ないし扁平上皮であった. ところがED処理を行なった第2, 3群では腔上皮の増殖肥厚が見られ, 50μgのED処理を行なった第3群では15匹中2匹の腔前部から会陰の全域にわたって腔上皮が角質化していた. この第3群の残りの大部分の動物では, 腔全域にわたって上皮の著しい肥厚が見られ, 角質化は膣中部から会陰にかけての上皮に認められた. CAの母体投与で得られた雌性化雄マウスの腔は大部分が尿生殖洞由来と考えられているので, 本実験で雌性化雄マウスの膣中・後部で上皮に角質化が見られたことは尿生殖洞由来の細胞がエストロゲン非依存の腔上皮の角質化に関与する可能性が強いと推論された.
著者
鈴木 賢英
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.81-91, 1977-03-10 (Released:2014-11-22)
参考文献数
24
被引用文献数
2 3

ICR系マウスを用いて, 妊娠14日から20日まで6mgのcyproterone acetate (CA) および溶媒のみを妊娠マウスに注射し, 経時的に殺して雄胎仔の生殖路を組織学的に調べた. その結果, 雌胎仔およびCA投与群の雌性化雄胎仔の腟原基は妊娠16日から18日の間に出現し, その頭側部は前立腺小室に相当するミュラー管由来の腟原基で, 尾側部は尿生殖洞に由来する細胞索 (腟板) であった. この雌性化雄仔の腔原基は, 雌のそれに比べてミュラー管由来の部分が短い点を除けば質的に同様と考えられる. 雌性化雄胎仔での腟板形成は雌胎仔と同様に尿生殖洞背側壁から1対の細胞索として生じ, 妊娠18日でその基部が融合し, 妊娠19日で雌新生仔と同様な尿道から隔離された1つの腟板を形成した. 次に雌性化雄マウスの腔原基形成および雄性性腺付属腺の分化と発達に対するCAの影響を調べるために, 妊娠14日から20日まで, 1mg, 3mg, 6rngのCAおよび溶媒を妊娠マウスに皮下注射し, 妊娠20日に開腹して雄胎仔を取り出し, その生殖器管を調べた. CA投与群の雄の腟原基形成において最も強く影響を受けるのは腟板形成であって, 6mg投与群では腟板の形態は雌とほとんど同様であり, 3mg投与群ではその発達は抑制され, 1mg投与群では雌胎仔またはCA6mg投与群の妊娠18日の胎仔に見られる程度の腟板形成しか起こらなかった. さらに雄性性腺付属腺の発達の抑制 (脱雄性化) もCAの濃度と相関しており, 中でも脱雄性化の程度が著しかったのは尿生殖洞由来の器官で, 尿生球腺・凝固腺・前立腺の順にその発達が抑制された. これに対してウォルフ管由来の精管および精のうはほとんど抑制されなかった. これらのことからアンドロゲンと腔原基形成および雄性生殖路の分化と発達との関係を考察した.