著者
鈴江 英一
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.74-90, 2014

<p>近代日本国家にとって北海道は「辺境」「内国殖民地」であった。明治維新後、日本は支配を北海道の内陸にまで及ぼし、これを農耕地として占拠し、移民の流入を図った。同時にこの帝国は先住民族であるアイヌ民族を支配する。北海道を統治した官庁である開拓使及び北海道庁などの文書は、北海道での資源の獲得と分配の痕跡である。アーカイブズの世界は、こうして北海道の全面を覆っていく。それはアイヌ民族を含めて北海道に住む人びとがアーカイブズの世界に取り込まれていく過程でもあった。</p><p>北海道の官庁は、このような歴史のなかでアーカイブズを蓄積してきた。しかし、土地の払い下げなどによる開拓の発展が終わり、辺境性を喪失すると、アーカイブズは保存の意義が失われた。今日、北海道立文書館で保存しているアーカイブズ群は、新たに歴史的意義を認められることによって、廃棄、散逸の危機を免れ、収蔵されてきたものである。</p><p></p>