- 著者
-
鈴鹿 有子
- 出版者
- 医学書院
- 巻号頁・発行日
- pp.41-48, 2010-04-30
Ⅰ はじめに
インピーダンスとは抵抗のことで,インピーダンスオージオメトリーとは音のエネルギーが外耳,鼓膜,中耳へと伝達される際に,何らかの抵抗で伝わりにくくなる。その抵抗(音響インピーダンス)を測定する検査法である。
またインピーダンスオージオメトリーは鼓膜や中耳伝音系の異常にとどまらず,内耳や後迷路,顔面神経の情報も与えてくれる。他覚的検査であるので,信頼性も高く,短時間ですみ,純音聴力検査が不可能な乳幼児でも測定可能である。全自動式の機器が多く,手技的に難しい検査ではないが,正しい検査の心得は必要である。普及率も高く,以前から聴力検査とともに耳鼻咽喉科の診療に欠かせないものになっている。
現在インピーダンスオージオメトリーでできる検査は大きく分けて①ティンパノメトリー検査と②耳小骨筋反射検査である。
インピーダンスオージオメトリーの原理
音は外耳から入って,鼓膜,耳小骨,中耳を経て内耳に伝えられる。その経路で音エネルギーに対しての抵抗を音響インピーダンスという。インピーダンスオージオメトリーとは外耳からの音を与えて,跳ね返ってきた音を測ることで,どれだけの音が反射されたか,つまりどれだけの音が鼓膜や中耳を通っていったかを測定する。インピーダンスは小さいほうが抵抗なく音が伝達されたことになる。もちろん鼓膜,耳小骨を経るので,その分での抵抗があるのが正常であるが,鼓膜インピーダンスはきわめて小さいので,大部分の音は通過する。もし鼓膜インピーダンスが大きいということであれば,鼓膜が厚く,硬くなっていることを意味し,鼓膜のみでなく中耳腔に滲出液が貯まった場合は病態が著明に反映されるので,中耳インピーダンスともいう。外耳道から入った音のエネルギーは,耳小骨へ伝わり,耳小骨や耳小骨筋を動かすのにも消費され内耳へ伝わる。ということでインピーダンスオージオメトリーでは鼓膜,耳小骨,耳小骨筋,中耳腔,内耳の情報を得ることができる。