著者
奥野 秀次 小松崎 篤
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.54-60, 1995-02-28 (Released:2010-04-30)
参考文献数
16

自衛官の受ける音響外傷はその原因となる音源やその被曝の繰り返し具合い, また, 受傷する際の身体的条件も多岐にわたり複雑である。今回は自衛官における音響による内耳外傷の病態のひとつとして内リンパ水腫の様な病態がありうるかどうかを推察することを目的に, 音響外傷後の耳症状を主訴に受診した自衛官を対象として蝸電図法を用いて検討した。その結果一部の例で, 単に有毛細胞の傷害のみでなく蝸電図上-SPの増大が示されるような病態を有する例が存在することが分かった。しかし-SPの増大を示す例は30%以上あったが, 反復性聴平衡障害を示した例はわずか一例であり, 音響との因果関係を述べるのには更に症例を増やすと共に, 各症例についてより詳細に調査をすることが必要と考えられた。
著者
栗原 房江 廣田 栄子
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.669-678, 2012 (Released:2013-03-07)
参考文献数
17

2001年に, 保健医療従事関連法における国家資格取得要件が絶対的な欠格条項から, 相対的記載に改正された。そこで, 本研究は聴覚障害をもつ保健医療従事者 (医師, 歯科医師, 薬剤師, 保健師, 助産師, 看護師, 准看護師, 診療放射線技師, 臨床検査技師, 言語聴覚士) 56名の就労に関する実態を調査し, 改正当初と比較して8年の変容と就労環境整備に向けた課題を検討した。その結果, 保健医療専門職および就労先は増加していた。また, 医療施設に就労する者のうち80dBHL以上の例は57.9%であり, 聴力要因による就労状況の差は認められなかった。また, 聴覚障害に起因する転職経験者の割合に改善傾向はみられない, 就労環境における合理的配慮の限界等, その実態は厳しく, 情報保障環境の未整備も指摘された。そのため, 欧米の就労例を参照して本調査結果を考察し, 具体的な就労支援方法に関する検討が望まれた。
著者
南場 淳司 阿部 尚央 井上 卓 武田 育子 新川 秀一
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.70-77, 2011 (Released:2011-04-16)
参考文献数
12

労災認定において詐聴, とくに誇大難聴が存在することは広く知られているところである。今回我々は2006年1月から2009年12月までの4年間に当科を受診し騒音性難聴の労災認定を希望した14症例を対象として, 従来施行してきた検査に加えて聴性定常反応検査 (ASSR) を行った。詐聴の診断はASSR閾値と純音聴力閾値を比較し, 純音聴力閾値がASSR閾値よりも高い場合を詐聴とした。結果は14症例中7例 (50%) を詐聴と診断し, その7例いずれも難聴の存在自体は明らかであり誇大難聴と考えられた。詐聴と診断した7例中6例は, 従来行ってきた検査からも詐聴と診断可能であり, ASSR検査結果と一致した。これまで騒音性難聴の意見書作成の際に, 詐聴の判断に苦慮するケースを少なからず経験してきたが, ASSR検査を行うことによりこれまでよりも正確に詐聴の診断ができる可能性が考えられた。
著者
山岨 達也 越智 篤
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.52-62, 2014-02-28 (Released:2014-11-06)
参考文献数
46

要旨: 加齢に伴う聴覚障害では, 末梢聴覚, 中枢聴覚, 認知の三つの機能が複合的に障害されている。老人性難聴では聴力は高音域から閾値上昇し, 難聴の進行は年と共に加速し, 個人差が大きいことが知られる。語音明瞭度は聴覚レベルに応じて悪化するが, 高齢になるほど聴力レベルよりも悪化する傾向にある。耳音響放射や聴性脳幹反応は主に聴力レベルに応じて障害されるが, 年齢自体の影響も見られる。Gap detection などで評価できる時間分解能も加齢により悪化する。難聴のために日常生活上の会話に不自由を感じる場合には補聴器装用が治療の第一選択となる。補聴効果が無くなった場合は人工内耳が高齢者においても有用であるが, 装用開始年齢が高齢であるほど術後の聴取成績が悪い傾向にある。加齢に伴う聴覚障害に対しては不要な強大音曝露の回避や動脈硬化の予防や治療などが有用と考えられる。また聴覚に基づく認知訓練が時間分解能の改善に役立つ可能性も示唆されている。
著者
佐々木 亮 欠畑 誠治 武田 育子 木村 恵 新川 秀一 松原 篤
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.198-205, 2015-06-30 (Released:2015-09-03)
参考文献数
23

要旨 : 突発性難聴に対する副腎皮質ステロイド (以下, ステロイド) の鼓室内投与による治療の報告は約10~15年間で数多くみられるようになってきた。しかし, 治療や聴力改善の基準が統一されていないことや症例数が少ないことなどから, その効果は明らかなものではない。我々は突発性難聴に対する治療として短期間連日デキサメサゾン鼓室内注入療法 (IT-DEX) を第一選択として行っている。CO2 レーザーによる鼓膜開窓をステロイドの注入ルートとして用い, 原則として単独治療を行っている。本治療を行った96例における治癒率は39.6%であった。また, 厚生省研究班による突発性難聴に対する単剤投与の有効性の検証に症例の基準を合致させて IT-DEX 単独初期治療の効果を検討したところ, 対象症例27例中治癒は20例, 治癒率は74.1%となり, 厚生省研究班の単剤投与の成績と比較しても良好であった。症例数が少ないことが問題と思われ, 多施設での検討などが必要ではないかと考えられた。
著者
立木 孝 笹森 史朗 南 吉昇 一戸 孝七 村井 和夫 村井 盛子 河嶋 寛
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.241-250, 2002-06-29 (Released:2010-04-30)
参考文献数
31
被引用文献数
10 7

耳疾患, 耳症状などのない, 日本人正常成人の聴力が年齢とともにどのように変化するか, いわゆる「年齢変化」を確認することがこの研究の目的である。 そのため, 特別な生活背景のグループでない, 無作為の正常成人1521人の聴力を, 公的大病院の聴力検査用防音室で, 経験ある聴力検査技術員が, 日本聴覚医学会で定めた方法によって検査し, 年齢別, 性別に検討した。 年齢による聴力変化の成績は従来文献に報告されていた内外の成績とほとんど同じであり, 従って今回得られた結果は, 日本人正常成人の年齢変化として「標準」になるものと結論した。 性別の検討では, 高年齢, 高周波数について男性が女性より悪いという結果が得られたが, その程度はわずかであり, 欧米のように男女別々の基準を定める必要はないものと考えられた。
著者
永井 賀子 萩原 晃 河口 幸江 小川 恭生 服部 和弘 河野 淳 鈴木 衞
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.58-65, 2016-02-28 (Released:2016-08-31)
参考文献数
14

要旨: 突発性難聴例の治療開始後の聴力改善経過と改善率について検討した。2009年1月から2013年12月までの5年間に東京医科大学病院耳鼻咽喉科を受診し, 入院加療を行った Grade3 または 4 であった突発性難聴121例, 121耳を対象とした。Grade3 は70例, Grade4 は51例であった。治療開始後7日以内に5周波数の平均聴力が 20dB 以上改善した例を早期改善群, 8日以上14日以内に改善した例を中期改善群, 14日以内に改善がみられない例を改善なし群に分類した。治癒率は早期改善群で68%, 改善なし群で8.2%であり, 早期改善群で有意に高い結果であった。早期改善群では聴力予後は良好で, 改善なし群では聴力予後が不良であった。
著者
岡野 由実 廣田 栄子
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.648-659, 2015-12-28 (Released:2016-06-09)
参考文献数
24

要旨: 一側性難聴者4例を対象として, 聞こえの障害の実態と障害認識について, 自己評価尺度と半構造化面接を用いて検討し, 当事者の視点で後方視的に分析した。 自己評価尺度からは, 患耳側や騒音下の聴取, 音源定位などについて日常的に高い聞こえの困難度が指摘され, 心理社会的な課題には個人差を認めた。 叙述からは, 一側性難聴による聞こえの障害に関し, 4種のカテゴリと27種の概念が生成され, 難聴の自覚から社会生活上の課題に対処し受容していく個別の経緯と, 関連要因を検討した。 学童期から成人期までの一側性難聴による聞こえとコミュニケーションの障害についての心理的な受容と変容, 対処には共通性を認め, とくに, 思春期までの障害観の形成と発達課題の充実に, 養育者の心理状況や障害観等の影響が指摘された。 当事者の発達段階に応じた情報提供や同障者との交流など, 養育者と当事者に対する診断期からの長期的支援の視点の必要性が示唆された。