著者
近藤 茂則 神田 育子 石田 義成 鍋島 靖信
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.13-20, 2010-06-30
参考文献数
20

大阪湾におけるスナメリ<i>Neophocaena phocaenoides</i>の分布と密度を把握するために,大阪府環境農林水産総合研究所の海洋調査船「おおさか」によるスナメリ目撃記録の分析を行うと共に,湾中部海域を航行するカー・フェリーを用いてライントランセクト法による目視調査を実施した.海洋調査船「おおさか」は,2004年4月~2007年12月の期間における263日間に,合計25群のスナメリに遭遇していた.同船は大阪湾の広い海域を航行していたが,スナメリは岬町~岸和田市沖の湾東部海域(34&deg;21&prime;~32&prime;N,135&deg;8&prime;~20&prime;E)でのみ目撃されていた.また,カー・フェリーからの目視調査では,2005年10月~2007年1月の期間に,Beaufort風力階級2以下の海況下を4,403 kmにわたって調査し,合計72頭のスナメリを発見した.発見位置は,湾東部海域(34&deg;23&prime;~26&prime;N,135&deg;8&prime;~13&prime;E)に集中していた.スナメリの密度は,3~7月に高い値を示す傾向があった.ピークの4月における密度は,0.238頭/km<sup>2</sup>と推定された.これらのことから,スナメリは,大阪湾東部の限られた海域に主に分布しており,春~初夏にかけてこの海域に多く来遊すると考えられた.<br>