著者
米澤 紗智江 鎌田 穣 黒川 順夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.157-164, 2016 (Released:2016-02-29)
参考文献数
9

過食嘔吐の症状が消失後, 身体と心の不一致感を主訴とする事例に対し, ヨーガ療法による介入が奏効したので報告する. ヨーガ療法は, 独自の人間観, 病理論, 治療/指導論, 技法論を有する心理療法体系である. 摂食障害専門ヨーガ療法の通所施設にて約3カ月間 (1回/週・90分), ヨーガ療法を実施した. プログラムは身体面からのアプローチを主軸としたが, 主な介入のターゲットとしたのは身体的改善や呼吸機能改善以上に, 身体感覚の意識化や感覚に対する認知などの心理的側面であった. その結果, 失体感症傾向や気分状態の改善が認められ, 主観的症状も快方に向かった. 以上から, ヨーガ療法による身体感覚の意識化の促進が, 本事例でみられた心身の不一致感および摂食障害でよく認められる失体感症傾向の改善に有効に作用したと考えられる. また, 病理が身体性と深く関連している摂食障害に対し, 予防・回復支援・再発防止それぞれの段階で奏効する可能性が示唆された.