著者
鎌田 道彦
出版者
仁愛大学
雑誌
仁愛大学研究紀要 (ISSN:13477765)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.33-42, 2006-12-30

プロスポーツを職業にする人間の職業期間は短く,引退することによって第二の人生の選択を迫られる.今年度引退を行ったZINEDINE ZIDANEと中田英寿の両プロサッカー選手の引退エピソードについて考えた結果,両者とも体力的な衰えの要因は認められ,自分のイメージと実際のプレーとのズレが本人に不全感を生じさせていた.そして,このプロセスをプロサッカー選手としてのアイデンティティの混乱や危機として捉えることができた.この解決法として,プロサッカーを引退するプロセスを通じて,イメージと身体のズレを受け入れることによって,この危機に適応していけると考えられる.そのために,この引退の時期というものを自覚しつつ,サッカー以外の面での自己理解の促進や将来のビジョンの確立が重要と考えられる.今後,引退問題に対してカウンセラーの導入など,サポートシステムを充実していくことの重要性が示唆された.