著者
鎌野 俊彦
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.570-574, 1985

膝関節疾患に多くの漢方医家に使用されてきた防已黄耆湯は, 漢の時代に作られた「金匱要略」という書物に記載されている漢方薬で, 主薬は防已と黄耆でその他に蒼朮, 大棗, 甘草, 生姜の6種類の生薬の組合せにより構成されている. 防已は, オオツヅラフジという植物のツル性の根茎から採取され, 薬効は消炎鎮痛利尿作用を有する. 黄耆は, マメ科の植物で防已と同じように水を逐う作用がある. 使用目標としては, 体表に水分代謝の異常のために下肢に浮腫があり関節が腫脹し痛みがある, 体質的にはやや虚弱で肥満の傾向があり色が白く筋肉の軟かく水太りの人, 多汗で利尿減少があり疲れやすく体が重い足が冷えるといった症状の人に用いる. かかる特性を有する防已黄耆湯を変形性膝関節症3例に使用し, 良好な臨床効果を認めたので, その臨床経過を詳細に記し, かかる漢方療法の今後の適応について考察した.