著者
長南 幸恵
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.29-39, 2014-11-30 (Released:2019-04-25)
参考文献数
54
被引用文献数
1

自閉症スペクトラム児者の感覚の特性に対する支援を検討するために、過去30 年間の国内研究のレビューを行った。医中誌Web 版にて「自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorder: 以下ASD)」と「感覚」を検索キーワードとし、対象や内容が関連のないものを除外した結果、52 件であった。これまで医学的診断基準に感覚の特性(過敏や鈍麻:以下特性)が盛り込まれていなかったことが影響していると思われたが、今後は増加していくと予測される。感覚の特性に関する研究では、文献数および扱っている感覚数共に最多であった作業療法分野がその中心を担っていると思われた。ASD 児の半数以上に感覚の特性が生じ、生活の困難と結びつき、その程度や種類も個別性が高い。したがって、個々にアセスメントする必要があるが、誰がいつどのようにアセスメントしていくのかは、今後の課題の1 つである。さらにASD 児の母親は、早期から感覚の特性に気がついていることが多く、それが母親の感じる育てにくさにつながっている可能性がある。したがって、母親の感じる育てにくさから支援を開始することがASD 児の早期診断、早期支援に繋がる可能性があるだろう。
著者
長南 幸恵
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.53-61, 2017-09-30 (Released:2019-04-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

感覚の問題は、ASD 児の半数以上にあり、DSM-5 の診断基準にも新たに加わった。しかしASD 児の感覚の特性と行動の実態は明らかではない。今回は、ASD 児の視覚、聴覚、触覚の低反応と行動の実態を明らかにすることを目的とし、知的障害および言語障害のない年長児3 例を対象に保育活動への参加観察から得たデータを基に質的記述的分析を行った。視覚では視野の狭さにより「無関心」にみえる行動に繋がり、聴覚では感覚の同時処理や言語処理の困難さから「無視」や「無反応」にみえる行動として現れると考えられた。触覚では不確かな体性感覚が見られ、情緒的発達を妨げる要因となる可能性が示唆された。感覚全般の支援として感覚刺激負荷の減少、中心視で対象を捉えられるような視覚支援、ゆっくりと短文で話す聴覚特性への配慮、伸縮性のある衣服の着用や触覚体験を重ねるなどの触覚支援等が重要である。
著者
長南 幸恵
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.29-39, 2014

<p>自閉症スペクトラム児者の感覚の特性に対する支援を検討するために、過去30 年間の国内研究のレビューを行った。医中誌Web 版にて「自閉症スペクトラム(Autism Spectrum Disorder: 以下ASD)」と「感覚」を検索キーワードとし、対象や内容が関連のないものを除外した結果、52 件であった。これまで医学的診断基準に感覚の特性(過敏や鈍麻:以下特性)が盛り込まれていなかったことが影響していると思われたが、今後は増加していくと予測される。感覚の特性に関する研究では、文献数および扱っている感覚数共に最多であった作業療法分野がその中心を担っていると思われた。ASD 児の半数以上に感覚の特性が生じ、生活の困難と結びつき、その程度や種類も個別性が高い。したがって、個々にアセスメントする必要があるが、誰がいつどのようにアセスメントしていくのかは、今後の課題の1 つである。さらにASD 児の母親は、早期から感覚の特性に気がついていることが多く、それが母親の感じる育てにくさにつながっている可能性がある。したがって、母親の感じる育てにくさから支援を開始することがASD 児の早期診断、早期支援に繋がる可能性があるだろう。</p>